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元デザイナー採用担当が教える、選考通過率の高いポートフォリオ作成術


ここ最近、転職するにあたって約10年ぶりにポートフォリオを作りました。私は元々ポートフォリオ作りが苦手で、力が入りすぎていつまでたっても完成しない…といった状況になりがちだったのですが、今回はわりとすんなり完成しました。

その理由は、ここ数年でデザイナーの採用に関わり、採用担当者の目線で沢山のポートフォリオに目を通す機会が増え、作成において気をつけなければならない点がなんとなく分かるようになったからだと感じています。

そこで今回は、こんなポートフォリオなら選考を通過しやすいのでは?と思うことをまとめてみたいと思います。尚、考え方は企業や採用担当者によって異なるので、あくまでも個人の考えとしてご参照ください。

作成前に踏まえておきたい認識

そもそもポートフォリオとは

まず辞書で「ポートフォリオ」の意味を調べてみると、「紙挟み」「折鞄(おりかばん)」とあります。これは書類をまとめて入れておくケースのようなもので、必要に応じて書類の差し替えができるものです。

過去の私を含め多くの人が、ポートフォリオは一つの完璧な完成品を作るもの、と誤解している節があります。しかし元々の意味合いを踏まえても、提示する相手によって都度内容を調整するもの、というのが正しい認識です。

就職活動で使うポートフォリオなら、受ける企業の業務に合わせて掲載内容や掲載順を調整すべきですし、営業ツールとして案件を受注するためのポートフォリオなら、ターゲットとする顧客の悩みに近い参考事例を中心に掲載することになります。

ポートフォリオは「作品集」ではなく「解決事例集」


ポートフォリオはデザイナーの作品性・作家性を相手に見せつけて優越感に浸るものではありません。課題解決のステップや考え方と共に最終的なアウトプットを事例として見せ、相手に安心してもらうためのツールです。

上図の上半分のように「自分の実績を見てくれ!」という気持ちが優先されると、受け手に響きにくくなります。逆に「私と仕事をすれば具体的にこんなことをするのでメリットがありますよ」と伝えられると、良い結果に結びつきます。

見る側の視点に合わせ、どんな絵や言葉が入っていたら、自分という人材が役に立つと思われるかを、とことん突き詰めて考える必要があります。

採用担当者の興味を引くための5つのコツ

1)構成要素はプロフィール1割:実績9割にする


上図のように、転職活動で必要になる書類はポートフォリオ以外にもいくつかあって、それぞれに役割があります。実績以外は履歴書や職務経歴書で満たされるので、ポートフォリオには実績のみを掲載するのが合理的です。

とは言え、名前を含む簡単なプロフィールくらいはあった方が親切なので、それらを1割程含めたバランスが良いと思います。くれぐれも不要な情報でページ数をかさ増ししないようにしましょう。その方が採用担当者の確認の負担も少なくなります。

2)自分語りは書類選考通過後にする


選考ステップで初めてポートフォリオを目にする書類審査では、何よりもまず実績が求めるレベルに適っているかを見定めます。そのため、志望動機を除いて上図のような「自分語り系コンテンツ」は読み手にとって優先度が低い情報になります。

書類審査を通過して実際に面接で顔を合わせる時に、十分に詳細を伝える機会があるので、ポートフォリオの中では長々と語らないようにしましょう。もし語るとしても、ボリューム少なくサラッと見せるようにしましょう。

3)企業と自分の特性が重なる案件を目立たせる


前提でお伝えした通り、ポートフォリオの役割は「この人と仕事をすれば自社にメリットがある」と感じてもらうことです。そう考えると、受けようとしている会社の実績と近い実績が目立っていた方が、受け手としても入社後の活躍を想像しやすくなります。

例えば、インタラクティブ性の高いキャンペーンサイト作りが得意な制作会社に対して、コーポレートサイトの実績を強調して掲載しても、「この人を採用して活躍してくれるのだろうか…?」という気持ちにさせてしまいます。

対象企業の業務内容や実績をよく確認し、企業の強みと自分の強みが重なる実績を中心に掲載することが大切です。

4)未踏の領域にチャレンジする際は自主製作を含める


しかし、グラフィックデザイナーからwebデザイナーに転身する場合、LPなどが得意なデザイナーがプロダクト系のUIデザイナーを目指す場合など、対象企業の得意領域に対して、自分の経験や実績がマッチしない場合もあります。

新たな領域にチャレンジする勇気は素晴らしいものですが、採用担当者の気持ちとしては「いくらこの領域に強くても、うちの得意領域で強みを発揮できるのかな…」と不安になるのが正直なところです。こんな時に有効なのが、自主制作の実績です。

例えばUIデザイナーを目指すなら、Daily UIで作った100画面を並べるのも良いし、web制作経験がないけどwebデザイナーになりたいなら、自分なりに企業サイトのリニューアルデザインを作って掲載するのも良いかもしれません。

精神論的な言葉になりますが、採用担当者に「熱意」を届けるのはとても大切です。ここで言う熱意は一重に「数」と言えるでしょう。とにかく、誰が見ても驚くほど沢山の自主制作を掲載すれば、採用・不採用はともかく、熱意は必ず伝わります。

圧倒的な数が見えると「実績はないけど、ここまでやる気があるなら入社しても頑張る人なのかもしれない…話を聞いてみようかな」と考えてもらえるかもしれません。

5)体裁も自分の強みを見せる手段ととらえる


ポートフォリオの体裁について、webデザイナーだからブラウザで見れる形式の方が印象が良いのでは?紙にプリントしたポートフォリオが無いと手抜きと思われるのでは?といった悩みはないでしょうか。

実際のところ、こんな形が最適という答えはありません。採用担当者は、どんな体裁でまとめているかよりも、自分の能力をうまくプレゼンテーションするために最適な体裁を選べているか、に注目します。

例えば開発もデザインも両方極めたいなら、ブラウザで確認できるポートフォリオがあった方が強みを証明できます。紙媒体とweb媒体、どちらも極めたいなら、HTML版と表紙や紙にこだわった冊子版、両方作った方が強みを理解してもらいやすくなります。

また、書類審査が通って対面での面接になった時、どんな形がプレゼンしやすいかを考えておくのも大切です。プレゼンの場では自前のPCにポートフォリオを映して見てもらうのがベストの自己紹介方法なら、紙のポートフォリオは不要でしょう。

また、オンラインのポートフォリオ作成サービスを使う手もあります。個人的には、デザイナーなら見せ方にも独自のこだわりを持ってほしい気がしますが、求めるレベル感に対する実績が伴うなら、問題ないとも思います。

ポートフォリオの作例


ポートフォリオサンプル(PDF形式:6MB)

ここからは実際にポートフォリオの作例をご紹介します。上記のリンクからPDF形式でご覧いただけます。このサンプルは私の直近のポートフォリオをベースにしたもので、いくつかの部分をダミーのサンプルに置き換えたものになります。

サンプルと実際の私の実績が混在しますが、画像マークやダミーと書いた部分は仮のものと認識いただければと思います。本来なら転職用に作ったものをそのままお見せできればよいのですが、非公開も含まれるため、こんな形をとらせていただきました。

とはいえ、何も画像がないとイメージしづらい部分もあるので、2011年以前に関わった昔のプロジェクト画像で一部使えそうなものは掲載しています。古い案件イメージでちょっと恥ずかしいのですが、何卒ご了承ください。

もしも私が実際に関わった直近のプロジェクトが気になる方は、株式会社ベイジの実績ページをご確認いただいて、各ページの制作クレジットから私の名前を探していただけると嬉しいです。

尚、私は開発力に強みがないことや、面接の場でスライド形式での説明したいと考えていたため、すべでPowerPointで作成しています。

全体構成


全体の構成は5つに分かれており、レスポンス広告のセオリーである結果、実証、信頼、安心の流れをになっています。これは購入や申し込み、問い合わせをより多く獲得する上での情報設計の基本で、webサイトや広告でもよく取り入れられています。

表紙


ポートフォリオは作品集ではないとお伝えしましたが、それは無個性とイコールではありません。採用担当者は連日多くのポートフォリオに目を通すため、一目見て「何かセンス良さそう…」と感じると、中身をじっくり見ようという気持ちになります。

表紙の役割は、中身に興味をもってももらうためのきっかけ作りです。私のポートフォリオの表紙が皆さんの目にどう映るかは分かりませんが、目指したところは「なんとなくセンス良い人かも…」と思わせるところでした。

ちなみに、一応このビジュアルの意味もあります。デザイナーは複雑な物事をシンプルで分かりやすく伝える仕事なので、複雑な要素とシンプルな要素が共存したビジュアルになっています。

特長(結果:自分に何ができるのか)


まず特長パートで、端的に自分にどんな能力があるのかを伝えます。最初にフィロソフィーという形でメッセージを入れ、自分の力を3つにまとめて説明しています。このパートで、この後どんな実績があるのかを予測できるようになっています。

物事を分かりやすく伝えるコツは、大枠→詳細の流れで説明することです。本に目次があるように、人は最初に全体像を見通すことができると、安心して次の話を聞く心の準備ができるのです。

スキル(結果:さらに具体的に何ができるのか)


ここでは先に挙げた3つの特長を、実際のスキルという切り口で形を変えて伝えています。UI・ビジュアルデザインを中心に、プロジェクトマネジメント、ブランド設計、ライティング、情報設計、UXリサーチと、図解で先に全体像を示しています。

その後は、それぞれのスキルをさらに具体的な言葉で伝えています。各説明文に加えて、具体的なアウトプット、利用するツールなども含め、より対応できる内容をイメージしてもらいやすくしています。

またここでは見る人を退屈させないために、目を惹くビジュアルを組み込んでいます。文字だらけのプレゼン資料は飽きてしまうので、適度に退屈させないための工夫を入れるようにしています(UI・ビジュアルデザインの画像は2011年以前の実績です)。

実績:デザイン(実証:どのように実行するのか、したのか)


ここから実績紹介です。前段と同じく先に全体像として、私の場合は実績に3つのカテゴリがあることを伝えています。また一つ工夫している点として「私にできるデザインとは」という見出しで、できることを具体的に言語化したページを作っています。

忙しい採用担当者はとにかく結論を知りたがっています。採用希望者の方からあらかじめ、自分にできること具体的な言葉でまとめておくと、採用担当者が多くの実績から自分の目と頭で特長を把握する手間や負担が少なくなります。

そしてこちらが代表的な実績です(掲載実績情報はすべてダミーです)。思い入れのある実績が沢山あっても、忙しい採用担当者はすべてに目を通さない可能性もあります。見る人に負担を考慮して最低限見て欲しいものを選びぶのが良いでしょう。

各実績の1ページ目は、大見出しでプロジェクトの概要を伝え、詳しい状況説明を箇条書き3つでまとめます。加えて制作期間、担当領域、URLと、ここも大枠の概要から少しずつ、内容をブレイクダウンして説明する形になっています。

そして2ページ目は各案件ごとに、特に自分のこんなスキルが役立った、こんな点を工夫した、という解説を掲載しています。ここが特に案件紹介の肝で、採用担当者が最も興味を持つ部分になります。

代表実績の選定基準も重要です。サンプルの場合、1ページ目で対応可能なwebサイトの幅広さを、2ページ目で得意とする作業の幅広さを、それぞれ満たした選定になります。基準は自分のスキルを最もうまく説明できる組み合わせで選ぶと良いでしょう。

その他の多くの実績は得意領域ごとにカテゴライズして、小さなサムネイルでサッと見てもらえるようにします。ここで印象付けたいのは各案件の品質ではなく、経験が豊富にあることです。

実績がこれ以上の数になると、採用担当者の貴重な時間を無駄にし、確認の負担を増やします。この時点で興味を持ってもらえて面談に臨めるなら、面接の場でさらに色んな案件を見てもらっても良いでしょう。

実績は内容によってフォーマットを変えると良いでしょう。私の場合はロゴ制作にも強みがあるため、それらを紹介するページも設けています。これらも流れは同じで、主要案件を強調して見せた上で、その他は流し見できる作りになっています。

実績 – ライティング・登壇(信頼・安心:第三者視点でどんな評価か)



ライティング・登壇以降のページは実際の私の実績になります。

私のスキル含まれるにライティングと登壇は、デザイン制作実績のような実際の技術とは違った側面を持ち合わせています。SNSでの記事のシェア数や書籍への寄稿などは、第三者からの評価を証明するものでもあるので、信頼・安心を担うコンテンツとしてここに掲載しています。

各実績ともに、できるだけ見出しやタイトル画像、写真を露出させ、実際の記事URLを辿らなくても内容が理解できるようにしています。忙しい採用担当者は詳細URLまで目を通す可能性は低いため、こうした配慮はとても大切です。

プロフィール


プロフィールは最後の最後に1ページだけ設けています。ページ数は少ないのですが、本当に興味を持ってくださった方がさらに私のパーソナリティを追えるよう、各種SNSやブログへのリンクを設置しています。

まとめと補足

提出前のチェックリスト

以上が、私が考える採用担当者に理解してもらいやすいポートフォリオの作り方でした。チェックリストとしてまとめると以下のようになります。作成時に見合わせると、改善のヒントが見つかるかもしれません。

  • 内容の割合はプロフィール1割:実績9割になっている
  • 全体の構成は結果、実証、信頼、安心の流れになっている
  • 転職しようとする企業の事業内容に合わせた実績を掲載している
  • 未踏の領域に転職する場合は熱意が伝わるボリュームで自主制作を掲載している
  • 最も見てもらいたい実績は5つ程度に絞り、各案件を詳しく紹介している
  • 内容説明は、まず全体像を伝えてから詳細を語るようにしている
  • 制作実績には制作期間、担当領域、実物が確認できるURLを記載している
  • 第三者からの評価が分かる情報(ブログ記事、登壇、受賞歴)を掲載している
  • 自分のパーソナリティをさらに確認できる情報にリンクさせている
  • 体裁は、自分の強みが伝わること、面接でプレゼンしやすいことを考慮している

とは言え、ポートフォリオの表現に制限はありません。要は自分の魅力が担当者や企業にしっかり伝わるようなアプローチ方法を意識して選べるかどうかが大切です。

新卒デザイナーは例外

尚、ここまで長々とテクニカルな話をまとめましたが、新卒でデザイナーを目指す人のポートフォリオに限っては、ここまでの配慮は求めません。粗削りでも、モノづくりに対する情熱が見えれば、それだけでポテンシャルを見込まれる可能性があります。

逆に言えば、数年でも現場でデザイナーを経験している場合、転職時に自分本位で見る人への配慮が足りないポートフォリオのまとめ方をしていると、実際のデザイン業務でも配慮が足りない人なのでは?と思われる可能性もあります。

ポートフォリオが良くても選考を通過できない場合もある

ポートフォリオ以前に一つ把握しておきたいことがあります。それは、企業はチームの構成バランスを考えた上で求人を出しているため、募集中のスポット枠も数が限られているということです。

スキル的に申し分無くても「丁度昨日、枠が埋まってしまった」となると、選考を通過できなくなります。またスキルが募集要項に対してオーバースペックすぎてもマッチしない場合があります。

最後に

ここでまとめたことでもそれ以外でも、ポートフォリオの作り方について質問してみたいことがあれば、Twitterからお気軽にご連絡ください。受け手の気持ちを考えたポートフォリオを作って、ぜひ転職を成功させてもらえればと思います。

荒砂智之のTwitterはこちら


約9年半在籍した株式会社ベイジを退職します

2020年8月31日をもって、約9年半在籍してきた株式会社ベイジを退職します。長い間、腰を据えて働き続けられたこと、とてもありがたく感じています。

退職エントリーの意義についてはいろんな議論があります。私の場合は、自分自身の経験を整理し、ひとつの区切りとして後で振り返るために書いてみたいと思いました。

9年半勤めた中で学んだことの中でも特に大切だと思ったことを、9年半にちなんで9つにまとめてみます。

1.戦略を持つ

戦略とは、自分の強み・弱みをすべて理解した上で、目的を達成するためのシナリオを考えることです。9年半の間、会社も自分も成長を続ける中で「戦略」と向き合い続けたように思います。

ベイジで戦略の力を感じたのは、提案するwebサイトはもちろんですが、自社の顧客を変えたことが特に記憶に残っています。私が入社した当初は代理店経由の仕事も多く、思うように自分たちのペースでプロジェクトが進行できないことがよくありました。

そこから数年の間に状況は一変しました。年間の問い合わせ件数は400件以上、ほぼすべて直取引案件、加えて自分たちと相性の良い顧客を選べるようになりました。計画的に自社のブランドを築き、情報発信を続け、組織作りを行ったからこそ成し遂げられたものだと思います。

私は過去に仕事の依頼が少ない会社に勤めたことがありました。デザイナー自ら仕事を取って来いと言われ、広告代理店のオフィスに出向き、知り合いのデスクに名刺を置いて存在感を示す、御用聞きに行ったこともあります。その経験をすべて否定はしませんが、そんな経験があるからこそ、ベイジの顧客が変わりゆく姿が特に目に焼き付いたのだと思います。

戦略を持つことは、仕事・プライベートに関わらず、生きていく中で常に向き合っていきたいと考えています。

2.情報を発信する

ベイジはいろんな方から「情報発信が盛んな会社」として認知されています。しかし入社当初の私はそこまで情報発信に積極的ではなく、Twitterアカウントも鍵をかけていたくらい消極的でした。しかし、企業・個人どちらにおいても、情報発信の恩恵が大きいことを学びました。

まず企業の視点。私が入社した当時、社員は3名でした。そこから現在の20名規模に至るまで情報発信を継続する中で、相性の良い顧客や採用希望者との接点が多く作られました。自分たちの考えを発信するからこそ、そこに共感してくれる人々が集まります。

そして個人の視点。自分でコンテンツを発信し、社外の人の目に止まることで接点が生まれ、社内とは違った角度の考え方に触れることができました。加えて興味を持ってくださる方のお声がけから、自分の活動の幅を広めることもできました。

情報発信が大切という話はSNS上でもよく目にします。しかし組織の状況や自分のキャリアに大きな変化をもたらす効果を実感できる人は少ないと思います。情報発信の影響力を肌感覚で沢山実感できたことは、貴重な経験でした。

3.法則を見つける

目に見えているもの、目の前で起こっていることは、そこだけ見るとひとつの物事・事象でしかありません。しかし歴史を辿ったり、同じ種類の物事・事象と比較することで、共通点や法則を見つけだすことができます。

例えばwebサイトなら、デバイスの進化に伴うUI変化の法則、コンバージョン率を高める情報設計の法則、読まれやすい記事タイトルの法則など、数え始めればキリが無いほど沢山あります。

これらをいち早く見つけ、独自のメソッドとしてまとめると、物事の成功確率や、組織全体の生産性を高められるようになります。また情報発信に繋げれば、同じ領域に関心を持つ人々の注目を集められるようになります。ベイジの情報発信の大元には、この法則の発見があります。

こうした法則は、普段ぼんやりと生活していて見つかるものではありません。メタ視点で物事を観察し、調べることで、初めて見えてくるものです。働き続ける中で、法則を見つける目を養うことの大切さを沢山学びました。

これを仕事だけでなく、趣味や自分の好きなことの領域まで含めて実践できると、生きることが楽しくなると感じています。

4.知識を更新する

キャリアを重ねて仕事の成功確率が上がると、身に付けた能力だけである程度仕事が回るようになります。しかし組織の中でのポジションが変わることで求められる業務内容が変わることもありますし、テクノロジーの進化に伴って専門領域で求められる技術が変わることもあります。

そんな時、過去に身に付けた能力だけでやりくりしようとしても、やがては通用しなくなり、新しい力を持った人材に淘汰されます。そうならないためには知識の更新が必要になります。

専門領域の知識を学ぶ基本は読書です。先人の経験や知恵が詰まった本は、場所も時間も選ばず、効率的に知識に触れることができます。9年半を振り返ると常に鞄に本が入っていたように思います。

また、セミナーや勉強会に参加して、同じ業界の人と交流することも、知識を更新する方法として最適です。特に同業者と交流して得られた知識は本には書かれていないものなので、表向きには語られない失敗談や悩みはとても参考になります。

そして今度は、得た知識で自分の目の前の課題を解決します。その体験こそが、他では得られないさらに特別な知識になります。この知識更新のサイクルを回せるようになると、環境の変化に強い人材になれるのです。

5.好きを突き詰める

受託のweb制作は、お客様から「専門家の意見を聞きたい」と言われることがよくあります。そこで、自分が経営者ならこう判断する、なぜなら…と自信を持って発言できなければ、お客様からの信頼を得られません。

自信を持って意見するには、専門的な知識と当事者意識が必要です。この2つは誰もが当たり前に大事と言いながらも、なかなか簡単に身に付くものではありません。どうすれば身に付くのでしょうか。

9年半勤めた中で私なりに導き出した答えは、自分の「好き」をとことん突き詰める、ということです。デザイナーやエンジニアになりたい!と思った時のワクワクした感情を、自分の中の大きな根にするのです。

とは言え、好きな気持ちが揺らぐこともあるでしょう。圧倒的に自分よりも好きな度合いが強い人と接した時「自分はそこまで好きじゃないのかも…」と感じてしまうこともあります。私も何度もそんな経験がありました。

しかし、そんな時こそ自分の大元にあった「好き」を大切にして、再び一から育てていく。毎日水を与えるように知識を蓄え、なぜこれは〇〇なんだろう?と関心を持ち続けた人が、専門的な知識と当事者意識を持ち合わせたプロフェッショナルになれるのだと思います。

好きだから目標が持てる。目標があるから関心を持てる。関心があるから知識が身に付く。知識が身に付くから自分の考えが正しいかどうか判断できる。このサイクルを作ることが大切だと思います。

6.正攻法を選ぶ

ベイジを象徴する言葉の一つに「正攻法」という言葉があると思っています。正攻法とは、奇策ではない正々堂々とした攻め方のことです。

制作物で例えるなら、気をてらったデザインでなくメッセージが正確に伝わるデザイン、SEOであればブラックハットでなくホワイトハット、雰囲気が良さげで耳障りの良いコピーでなく正確で具体的なコピーなど。行うことのすべてが正攻法です。

裏の手や奇襲は、一時的に人の気をひくことはできたとしても、長期的に見て良い結果を生まないことがほとんどです。そうした手を徹底的に排除して、正攻法を積み上げた後には、何事にも揺るがない功績や結果が残ります。

私は元来、大真面目で堅物というよりも、気の抜けたところもあれば、少し斜めからの意見で自分の存在を示すようなところがありました。しかし結局回りまわってそうした行動が良い結果を生まないことを、沢山体験してきました。

何事においても正攻法を積み上げることが、大きな結果を生むために大切なことを実感しました。

7.当たり前をやる

人も、組織も、webサイトも、当たり前にやるべきこと、やった方が良い結果を生み出しやすくなることがあります。

例えばwebサイト。結果を出せていないwebサイトの多くは、当たり前に必要なことができていなことがほとんどです。何か特別に新たなコンテンツを作るよりも、サイト内でコンバージョンに影響が強い箇所を特定して、そのポイントを改善した方が良い結果に繋がりやすいはずです。

顧客対応なら、来客があれば声を出して挨拶をする、メールは速やかに返信するといった行動、スタッフ同士のコミュニケーションなら、仕事を依頼する際はプロジェクトの背景から丁寧に伝えるなど、当たり前にやった方が信頼されやすいはずです。

これら一つひとつの物事に、難しいことはほとんどありません。しかし、当たり前に必要なことを当たり前にできている人や組織は多くないのです。だからこそ、当たり前を積み重ねるとそれだけで優位性が高まるのです。

大きな結果を生むために、何か特別で誰もやっていないことに目を向ける前に、本来やって当たり前なことに目を向ける方が大切であると、働き続ける中で学びました。

8.粘り強さを持つ

行動指針の一つに「失敗しても、再挑戦しろ。失敗のリスクから逃げていると、失敗は失敗のままで終わる。」という一節があります。

失敗したこと一つひとつは点です。そこからすぐに何かを生み出されるものではありません。しかし、失敗を繰り返す中での学びが結び付くと、長い線になります。その線が繋がった先に、驚くような成功や成長の体験がありました。

私の場合、特に印象深いのは2017年に大きな反響を読んだブログのバズ経験です。それまで何度となくチャレンジしたブログで泣かず飛ばずのエントリーを量産したこともありましたが、挑戦し続けた先に思っても見ない景色が待っていました。

最近だと、社内の活動となっているTwitter道場に参加するメンバーの中にも、自分のツイートに対して無反応だった時期を乗り越えたことで交流が楽しくなってきたといったエピソードを語っています。

振り返ってみると、成功よりも失敗したことの方が遥かに多くありました。しかし、私の中にはこの行動指針が腹落ちしていたこともあって、9年半という長い間、働き続けられたのだと思います。

9.礼儀・礼節を持つ

仕事をする中で最もストレスを生むのは人間関係です。憎しみ、恨み、疑念を抱いたまま仕事で成果を出すのは難しいものです。人と人が接する限り、必ず摩擦は生まれるものですが、できる事ならこうしたストレスは減らしたいものです。そこで大切になるのが礼儀・礼節です。

言葉の定義を調べてみると、礼儀は「社会生活の秩序を保つために人が守るべき行動様式」、礼節は「貴人に対して礼を行う作法」とあります。簡単に言うと、相手の立場に立って考え行動することです。

当たり前のことと言えばそれまでですが、ベイジの仕事はすべてこの礼儀・礼節が大元で大切にされているように思います。

具体的な行動を挙げると、対顧客なら、オフィスに来ていただいたら皆できちんと挨拶をする、オフィスは常に美しく掃除しておく、返答は待たせない、仕事をお断りする場合も丁寧に対応するといったことです。

対スタッフ同士のやりとりなら、誰かが何かを発表したら必ずその感想を伝える、自分が伝えやすい説明でなく相手にとって分かりやすい説明を行う、不快に思われるコミュニケーションがあったら指摘・教育する、なども含まれます。

また、業務の一部を依頼するパートナー・協力会社についても、外注や業者といった言葉で呼ばないことなども徹底されています。

礼儀・礼節は主に人の行動に対する言葉ですが、自社で作るwebサイトのコンテンツも、大元にはこの考え方が大切にされているように思います。

最後に

私はここで挙げた内容をすべて満足に実践できたわけはありませんでしたが、今後生きていく中でも、これらの学びは常に自分への問いかけとして心の中にあり続けると思っています。

9年半前は丁度東北の震災があり、世の中が混乱していました。30代となる大切なキャリアを決める重要な局面でしたが、私の目にはベイジ以外の選択肢は映りませんでした。それだけこの会社の持つ考え、哲学に惚れ込み、自分でもそれを体現できる人になりたいと思い、下北沢のとあるマンションの地下にあった小さな会社の扉を叩きました。

そこから30代の時間すべてをつぎ込み、本当に沢山の経験を積ませてもらいました。このエントリーで学びを改めて振り返ってみると、当時その選択をした自分は間違っていなかったと感じています。

現在、世の中はコロナの影響で混乱していますが、送別会も社内メンバーがオンラインで企画してくれました。リアルな飲み会の場では経験できなかったであろう、一生心に残る素敵な送別会を作ってくれたのがとても嬉しかったです(一部その様子を張っておきますね)。

在籍中、お世話になった方々にはこの場を借りて深くお礼申し上げます。本当にありがとうございました。9月からはまた新たな領域でチャレンジしていく予定です。SNSを通じてご報告していこうと思っていますので、もし気にしていただける方いらしたらぜひフォローしてください。

荒砂智之のTwitterはこちら

それでは今後とも私荒砂と、株式会社ベイジをよろしくお願いします。