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デザイン力に伸び悩むあなたが劇的にブレイクスルーするための3つの解決策

デザイナーとして数年間のキャリアを積み上げた方なら、ある程度の実力を身に付けてきたと感じる反面、自分の成長が「停滞している」と感じることはないでしょうか。幾つもの仕事を経験し、デザインの表現や作業スピードには自信が付いた、これまでの経験に沿って仕事をこなすことで大きな失敗にはならないけれど、でもどこか大きく進歩もしない、そんな状況です。

私も20代後半、特にその悩みを感じることがありました。正直なところ、そうした自分の停滞を感じつつも、見て見ぬふりをしているような心境もありました。そこには、会社に所属していてある程度の実力があれば、目の前の仕事は経験則からそこそこの力でこなすことができるし、急に進退を迫られるような切迫した状況には陥らないことなどが影響していたと言えます。停滞に対して「そこまで急いで対処する必要はない」「いつかは変わる」と自分の今の環境を肯定していたのです。

しかしこうした停滞に対する静かな焦燥感は、成長したいと思う気持ちの現れとも言えます。そこを一歩自分から乗り越えることで状況は変化するものです。私の場合、そのきっかけは転職にあり、今所属するWeb制作会社ベイジに入社後は、年を重ねるごとにその停滞から脱出していくことができました。

今回は私の経験を元に、停滞を感じるデザイナーがその状況を打破し、ブレイクスルーするために改めて見直すべきだと考えていることを3つご紹介しようと思います。

  • 1)デザインを基礎から突き詰めて学び直す
  • 2)広義のデザインに触れることができる環境に身を置く
  • 3)練習・勉強することの楽しさを知る

1)デザインの基礎を徹底的に突き詰めて学び直す

30歳の頃、私はすでに3社の制作会社を経験していました。新卒で入社した大阪の小さな広告制作プロダクションでは右も左もわからない状況からスタートしましたが、退職する時にはある程度仕事を任せてもらえるようになり、デザインに対する自信も付いていました。

そこから上京して就職した会社では多くの方から「ちやほや」されました。自分で言うのもなんですが、基本的に前向きな性格であるがゆえに、任せてもらえる仕事には心血を注いでチャレンジし、土日だろうが深夜だろうが、与えられたデザインのクオリティを上げることに集中する日々でした。

そんなところから、荒砂はデザインができる、と声をかけていただける状況になり、大きな挫折も少なく、順調な毎日が続きました。そしてその上り調子の時に会社が傾き、あえなく転職することになりました。

そこからは非常にもどかしく、苦しい期間でした。転職活動を続ける中で、自信を積み上げてきたはずのデザイン力は社外で通用するほどの芯の強さが無いことに気がつきました。一歩会社の外に出てみると、もっとレベルの高い仕事を、圧倒的なスピードでこなしている優秀な方が多く居ました。

正直に言えば、社外の人と積極的にコミュニケーションをとったりすることが無かったこの頃、自分の市場価値がどのレベルのものなのかは見て見ぬふりをしていました。なぜなら、会社の中に居れば優位な立場を追いやられるようなこともなかったからです。

しかし転職する機会に、自分の力がいかに井の中の蛙であったかを思い知りました。そしてそこで改めて思ったことが、もっと骨太で、どこでも誰にでも通用する、市場価値の高いデザイナーになりたい、ということでした。

そんな時、私は今でも第一線で活躍しているクリエイターのブログをよく見ていました。そこで語られるデザインに対する想いや、作られたもののクオリティの高さを横目で見つつ、なんとか自分もこうした人たちと同じ土俵に入れないものか、と考えていました。

そんな時に出会ったのが現在所属するベイジです。もともと代表がブログでデザインやwebビジネスに対する学びを公開していたのを外から眺めていたのがきっかけでした。自分もこうして外に語れるような、強いデザインに対する思考力が欲しいと心底思いました。

そして30歳でベイジに入社するわけですが、正直なところ、1~3年目は特にボロボロでした。それまで積み上げてきた感覚頼りのデザイン力はベイジで求められるデザインクオリティには耐えかねるもので、日々葛藤と焦り、力量不足に悩む日々でした。まさに基礎からの再スタートです。

デザインにおいて、ベイジでは4つの基本原則のおさらいからスタートしました。本を読み、練習し、実践することの繰り返しです。もちろん最初からうまくいくわけではなく、原則に反した判断から何度もやり直す日々が続きました。

思い返しても辛いと感じたシーンは多々ありますが、そんな中でもしぶとく継続できたのは、転職の際に経験した自分のデザイン力の薄っぺらさにほとほと嫌気がさしていて、その時の自分から少しでも脱却したい、という気持ちが常に根底にあったからだと振り返っています。

ベイジのデザインの特長は、デザインの基本原則やビジネスで求められる論理性、デザイナーびいきの視点に囚われないことに徹底的に忠実なところと、時にその原則うんぬんをさて置いて、パッと見で魅力的なのか?グッと人の心を引き込む力が宿っているのか?という、いわば論理性を度外視した感性の部分を、同時にバランス良く追求し続けるところにあります。

写真一つ、書体一つ、色一つ選ぶにしても、なぜその写真、書体、色である必要があるのか?という理由と共に、一目見て人の心ハッとさせるような魅力があるのか?という部分を徹底的に自分自身に問い続け、磨き続けていくような作業です。

実は私のように、感覚値だけである程度のデザインレベルに到達する人は世の中に五万といるのです。しかしその上のレベル、ユーザの心に強く正確に働きかけたり、企業のビジネス上の成果に論理的にひも付けて提案できるようなデザイン力に到達するためには、徹底的に感覚値や自己都合を排除した上で、ネガティブチェックに耐えうる論理的なデザインを導き出す、自分への厳しさが求められます。

私はそもそも感覚値でステップアップしてきただけに、自らそうした思考に至ることはできなかったと振り返っています。しかし、転職を期に基礎から再度積み上げることが求められる環境を選んだことで、そうした自分の特性を抑えた上で、デザインに対する思考を深めることができました。

そうして入社から6年、自分のデザインはお客様のビジネスの中での機能を果たした上で、様々なデザインポータルサイトにも掲載されるようになり、自分のデザインに対する考えをブログで社外に発表して、時には大きなバズを生み出すことも経験しました。30歳を過ぎた頃、自分が欲しいと考えていた「強いデザインに対する思考力」が少しは身につきました。当時の自分が今の自分を見たら、それこそタイトルにあるような「劇的な成長」だと感じるのではないかと思います。

当時の私と同じように、デザインが好きで誰にも負けたくなくて、でも本当に自分の力が外で通用するのかについては実は不安である、実は自分の力が人と比べて薄っぺらいことを知っているけれど、見て見ぬふりをして誤魔化している、今居る環境にとどまっていれば危機的状況に陥ることはないと思うけれど、実際に状況が変わった際のことを想像すると不安で仕方がない、そしていつかは本質的でどこでも通用する、強いデザインに対する力をいつかは身につけたい、と考える人が居たとしたら、もう一度基礎から徹底的に学びなおすことができる環境に身を置くことは、最適な選択肢の一つなのかもしれません。

しかし20代後半のタイミングを逃すと、こうした環境に身を置くことは難しくなります。なぜなら30代を過ぎた人材には基礎の学び直しよりも、チームをリードするような働きが求められるようになるからです。でもこの記事のタイトルにピンと来た方なら、まだ間に合うのではないでしょうか。

2)広義のデザインに触れることができる環境に身を置く

書体、配色、写真を選ぶといったデザインの手法は「狭義のデザイン」と言えます。まさに先に述べたような内容です。その上で、クライアントに対してwebを使ったマーケティング施策の提案や、UXデザインの手法を取り入れたサイト構築を行う上流工程の仕事は「広義のデザイン」の意味合いが強くなります。

例えば我々が制作に携わる企業サイトはテクノロジーの進化と共に、役割が変化しています。上の図を見ていただくと分かるように、1994〜2002年頃は企業の看板的な意味合いや、会社案内としての意味合いが強くありました。存在するだけで価値があった時代と言えます。この頃のWebデザインは見た目の新しさ、表現の面白さといった「狭義のデザイン」であっても十分に効果を発揮しました。

その後、徐々に役割は戦略実現のためのツールとして、またコミュニケーションのプラットフォームとしての役割を強め、リードの獲得、ブランドの形成への働きかけが強く求められるようになりました。そこでは前述したような表現手法にあたる「狭義のデザイン」よりも、人の心をどのように動かすのか?という「広義のデザイン」の力が求められるようになったのです。

ここで最初の話に戻りますが、実は停滞を感じるデザイナーは、ある意味狭義のデザインは一定の水準まで到達した人であると言えます。そしてその後のさらなる成長を望むのであれば、広義のデザインに目を向けなければならない、と私は考えています。

元々Webであれグラフィックであれ、デザインにはこの広義のデザインの考え方が根本にあります。しかし、就職した企業によってはこうした考え方、働き方を求められず、いかに表現のスキルを上げるかだけを課題として掲げられたり、広い意味でのデザインの意味に触れることができない環境も多く存在します。そうした企業の属した場合、デザイナーとしての働き方は時代の流れと逆行する形となって先細りしていきますし、さらなる成長を感じる事も難しいでしょう。

その環境を具体的に言うなら、プロジェクトの背景も満足に伝えられず、ただ決められた企画に沿って絵を作り、そこに自分の考えを反映しようと思っても、上流での決定事項は変えることができず、「なぜこんなもの作らないといけないんだ」という疑問が出やすい職場で働くようなイメージです。

もちろん、狭義のデザインのみに特化して働くキャリアもありますし、その働き方が自分の中でのデザイナー像である、と考える人もいます。しかし昨今のAI技術の進化に伴って、こうした狭義のデザインの部分については自動化が進み、細かなデザイン表現の場が奪われていく時代であることも認識しておくべきでしょう。

そうした中、心のどこかで広義のデザインへの関与を望む気持ちがある場合には、できるだけ早いうちにそうした考え方を重要と考える環境に身を置くことが大切です。ある程度、狭義のデザインである表現手法を追求することも重要ですが、例えば私のように転職などのタイミングで、デザイナーとしての働き方、未来を見据えて自らのデザイナーとしてのポジションを見直すことも大切です。

この点において、私は現在の会社に入社した後、ビジネスの戦略、マーケティング、ブランディング、UXといった広義のデザインを、直クライアントに提案する機会に多く関わることができています。制作会社も色々とありますが、こうしたビジネス戦略に強みを持たない企業に属した場合には、広義のデザインに触れる機会は少なくなります。

デザイナーとしてキャリアを積み上げる上では、最終的に自分はどういったデザインを作り、どういった規模の、どういった人々に影響力を発揮していくのか?を考えるべきです。そして自分の強みを知り、戦略的に進むべき道を検討する必要があります。

3)練習・勉強することの楽しさを知る

この記事を読んでいるあなたは、練習・勉強することは好きですか?学校でいうところの勉強とは、授業を受けてその内容を頭に叩き込み、テストでその回答を自分の頭から引き出す、というものです。本来、人はこうした自己成長に喜びを得られるものですが、なかなかその勉強すること自体の楽しさを知っている人は少ないものです。

先にも書いた通り、私はもともと根っから感覚値で物事を判断して結論を出しやすい性格のため、熱心に厚い本を読んで歴史から基本を学んだり、広い事実からセオリーを導き出したり、といった活動とは、学生の頃から無縁の生活を送っていました。

しかし、好きという気持ちは根底にあるため、意識的に「練習・勉強するぞ」とならずとも、興味の働くままに物を作ってみたり、目の前の課題をクリアするために努力したり、といった行動はその都度とってはいました。ある程度まではこうした行動パターンでも成長することは可能です。

ですが、人にその知識を体系立てて説明できたり、説明を受けた人が同じように再現できるレベルの勉強と、自分だけの感覚値としてプラスになるというレベルの勉強には大きな差があり、歳を重ねるごとに基礎体力の差に開きが生まれてきます。

私のように、場当たり的でミニマムな勉強方法は、目の前の課題をクリアする上では一時的に機能することもありますが、より高いレベルの仕事をクリアする時、不確定要素だらけのビジネス上の課題に対する答えを求められる時、チームや顧客に対する強い影響力が求められる時ほど、通用しなくなります。それはどんな企業、どんな職種を選んだとしても同じです。

私の場合はベイジで活動を続ける中で初めて、練習・勉強することの楽しさを知りました。例えば、先にも挙げたデザインの基本原則の知識を自分なりにまとめて資料を作り、勉強会を開いて人に教えることは、強く自分の知識として定着しました。また、デザインポータルに掲載されているような優秀なデザインの模写を練習として一定期間続けたことで、仕事の中ですぐに活かせる力になりました。

両方に共通するのは、自発的に積み上げた知識を人の目に触れるところにアウトプットしていたことです。こうすることで、知識は完全に自分の引き出しに格納され、いつでも自由に引き出すことができるようになります。これがいわゆる勉強というもの、学びというものであることであることを知りました。

伝えた人から「為になった」とコメントをいただくこと、そして何より、自分がその知識を利用して新たに大きな課題を解決できるようになった時には、場当たり的な勉強では得られなかった、自分の実力となったことへの実感と、喜びを得ることができます。自発的に勉強を重ねれば重ねるほど、自分の確固たる力と喜びを同時に得るサイクルが出来上がるのです。

勉強すること、練習することには苦労が伴います。私はよくこの話の際に、DRAFTの宮田識さんの言葉を思い出します。以下、著書である「DRAFT宮田識 仕事の流儀」からの抜粋です。

毎日の仕事に振り回されていたらダメですね。徹夜続きで何もできないっていうのは最悪。野球でもサッカーでもゴルフでも、スポーツ選手は試合とは別に、ものすごい量の練習をしています。バットが外れて負けた。そうしたら死ぬほどバッティング練習するじゃないですか。PKで負けた。そうしたらぶっ倒れるまでPKの練習をするじゃないですか。それを考えたら、「デザイナーは甘いんじゃないですか?どれだけ練習してますか?」ということですよね。世の中、簡単にうまく行く方法はない。自分が好きで選んだ仕事なら、やってみろと言うしかない。練習するにしても、言われたことをこなすだけじゃダメですよ。自分の意思で動かないと身に付きませんから。自分から求めて初めて分かること、覚えることがあるんですよ。それが長く記憶に残る。自分だけのアイデアソースになっていくんです。

誰もが凡人です。そうした凡人が結果を出すには、努力・練習するしかありません。これを毎日苦しい中でも継続することで、結果的に喜びや楽しみを感じることができるようになるのです。

私はこの「勉強する・練習する」ことを学んだのは、タイミングとして遅すぎたと感じています。世の中の優秀な方は若い頃から、勉強することの喜びと楽しさを知っていて、それを自然と生活の中に取り入れていることから、早くに高いパフォーマンスを発揮できているのです。

しかしそんな私でも30歳から勉強や練習を改めて意識しはじめたことで、人に自らの知識を伝え、自分の力で学んでいく喜びを覚えながら、伸び悩みや停滞感を脱出することができました。コツコツと自分が求められる力に対して前向きな勉強・練習を積み重ねる人であれば、私のように長い時間をかけなくても、短い期間で想像もしていなかった自分のポテンシャルを引き出すことができるはずです。

あとこの話で一つ気をつけておかなければならない話があります。それは自分が今いる環境が、練習や努力が報われる環境であるかどうかを客観的に把握しておくことです。こうした頑張りが報われない環境に居続けるのは、あなたのキャリアにおける大切な時間を無駄にします。そうした時は思い切って環境を変える必要があると、私は考えています。

まとめ

以上が、デザイナーの成長における停滞をブレイクスルーするために、私が改めて見直すべきだと考えている3点です。総じて言えば、まず基礎となる土台を積み上げることができる環境を選ぶこと、そしてそこで感覚的な判断基準を排除した論理的な考え方を身に付けるための活動を積み重ねること、が重要です。停滞期は辛いものですが、考え方一つ、行動一つでそれまでの停滞が嘘のように、ガラッと視界が開ける可能性は十分にあると考えています。

お知らせ

そして、もしもここでお話した内容に少しでも共感した、興味が湧いたという方がいらっしゃれば、ぜひ私の所属するベイジという会社もブレイクスルーのための環境として、選択肢に入れるのも良いと思います。採用サイトからご応募いただいて、お話を聞かせてください。もしくはFacebookTwitter経由で話しかけていただいても構いません。もちろん現状のスキルはある程度考慮されますが、それよりもここでお話した私の経験や考えに共感いただける方であれば、ぜひ積極的に応援していきたいと考えています。

興味を持っていただけた方はこちらから株式会社ベイジの採用情報をご覧ください


Service Design Night vol.4 ~事業会社とデザイン会社 デザイナーぶっちゃけトーク:スキルアップやキャリアパスについてどう思う?~への登壇にあたって考えたこと

2月28日(火)に渋谷で行われた「Service Design Night vol.4 ~事業会社とデザイン会社 デザイナーぶっちゃけトーク:スキルアップやキャリアパスについてどう思う?~」というイベントに登壇させていただきました。テーマは、事業会社と制作会社でデザインに関わる人がそれぞれの視点で、今後デザイナーはどのようにキャリアアップやスキルアップを図るのか?という問題を掘り下げて考えるというものです。

デザイナーに求められるスキルが多様化・細分化される中、数年後にどんな人材になっていれば良いのか?今後何を身につけていくべきなのか?という疑問は、多くの方が抱いている問題です。今回私は事業会社で働いたことのない、生粋の制作会社視点の立場でのスピーカーということで、お声がけいただきました。このエントリーでは、私自身が発表した内容を補足と合わせてご紹介してみたいと思います。

一緒に登壇されたのは、株式会社バンクの河原香奈子さん、株式会社rootの古里祐哉さん、株式会社Fablicの”わりえもん”こと割石裕太さんという顔ぶれでした。

登壇者の皆さんのお話

キャリアは考えすぎない(バンク河原さん)

バンクの河原さんは制作会社から事業会社に転職した経歴で、制作会社勤務の時代に培った「スピードと引き出し」を武器に事業会社へと転職し、現在は新サービスの立ち上げに邁進中。サービスの成長と共にリアルなユーザの声や周りの反応を感じられるところ、チームの一員としてサービスを作り上げる醍醐味がある、というお話はとても興味深い内容でした。制作会社のデザイナーは、制作内容や社内のレイヤー構造の面でも、最終的な受け手の反応を感じ難い場合が多いので、事業会社のデザイナーが得られる働き甲斐がよく分かるお話でした。

デザイナーはセルフブランディングが重要(Fablic割石さん)

Fablicの割石さんのお話はセルフブランディングに対する考え方でした。変化のスピードが速いWeb業界において、都度自分のスタンスを合わせることよりも、確固とした自分自信のデザイナーとしてのコンセプトを持つことで、他のデザイナーとの差別化を図ることが大切、というお話でした。割石さんは今回初めてお会いしましたが、割石さん自身のキャラクターと作り出すデザインの世界観が一致していること、そこをブラさずに外に向けてアウトプットを続けていることは、デザイナーとして生き抜く上で非常に重要であると感じました。

デザイナーに求められるのは横断的スキル(root古里さん)

rootの古里さんは事業会社から制作会社に移られた、河原さんや割石さんとは逆パターンのキャリアパスで、サービス開発に携わるデザイナーには、上流工程から実装に渡るまでの「横断的スキル」が必要であるというお話でした。昨今のデザイナーは表面的なデザインスキルに加え、デザイン思考に基づいたビジネス自体への理解がより具体的なスキルとして求められるようになったこと、そして進化し続ける技術的な側面への理解もキャッチアップしていく必要があること、両側面のバランスをうまくとりながらスキルアップしていく必要があることが再認識できるお話でした。

私が考えるキャリアパスとスキルアップ

そして私からはこんなスライドで、今後デザイナーとしてキャリアアップを図る上でどんなことが重要になるのか?具体的にどうやってスキルアップしていくのか?という点について、自分自身の経験を交えてお話させていただきました。要約すると、結論は次の2点です。

キャリアパス「ビジネスへの理解を深めて市場価値を高めることが重要」

まずキャリアパスは、デザイナーとしての主力武器であるデザインの表現力を磨きつつ、ビジネス面への理解を深めて市場価値の高い人材になることが重要です。キャリアスタート時、デザイナーはまず決められた指示書に従ってインターフェースやビジュアルを作る作業を任されます。そこで様々な表現方法を身につけていくわけですが、30歳を過ぎたあたりから「綺麗なデザインは作れて当たり前」という状況を迎えます。重要なのはその当たり前な状況の中で、どのように自分自身の市場価値を高めていくのか?ということです。よりマーケティングやUXを含めたビジネス的な視点でデザインの対象について語れるゼネラリストになるのか、テクノロジーの進化と共に変わり続ける最先端の表現を扱うスペシャリストになるのか。自分自身の特性を踏まえて見据えておく必要があります。

スキルアップ「広い対象に向けてアウトプットを継続することが重要」

そしてスキルアップについては、広い対象に向けて継続的にアウトプットを行い、フィードバックを得続けることが大切です。自分のアクションが他人に影響を与え、そこからフィードバックを得る、というのが一般的な学びのサイクルです。自分から何も発信しなければそのフィードバックを得る機会が少なくなるため、ハードスキル・ソフトスキル共には伸びることはありません。正直なところ、会社の仕事だけで手一杯になっていて「休めるときはしっかりと休みたい」と考える人も居るでしょう。しかし、そうしたしんどい時こそどうすればアウトプットできるのか?時間をかけなくても継続できることは何か?を考えて新たな一歩を踏み出す人こそ、スキルアップのスピードは早くなります。そしていつの間にかアウトプットが習慣となり、苦労せずとも自然とスキルアップする循環を自分の中に持てるようになるのです。

制作会社が良いのか、事業会社が良いのか

今回のイベントは「制作会社 VS 事業会社」的な構図ととらえがちですが、結局のところデザイナーにとってどちらでキャリアを積むのが効率的か?は、個人によって変わる、と言わざるを得ません。しかし、会社や業務内容によって違いがあることは大前提としつつ、上記の図のような傾向があるのではないか?と、このイベントに向けて資料をまとめる中で考えていました。どちらからキャリアをスタートしても、最終的に主力武器となるデザイン力と、ビジネスへの理解力、両方の力を付けていくことがデザイナーに求められることであると私は考えています。

制作会社のデザイナーはデザイン表現の幅を広げやすい

制作会社からのキャリアスタートとなった場合に得られるメリットとしては、やはりデザイン表現の幅が広くなる、という点が挙げられます。数少ない特定のサービスに絞られることなく、様々な業種のデザインワークを短期間でこなしていく日々は、確実にデザイン表現の幅げます。まずもってビジュアル表現で幅を広げたい人にとっては、やはり制作会社からのキャリアスタートが望ましいのではないでしょうか。デメリットとしては、事業会社ほどデザインした対象が結果的にどうなったのか?を知る機会が少ないことが挙げられます。それは言い換えると、一つのビジネスとしてデザインがどのように機能したのか?が分かりにくい状況である、と言い換えることもできます。

事業会社のデザイナーはビジネス的な視点が身に付きやすい

逆に事業会社からキャリアをスタートした場合には、自分が作ったデザインに対してユーザがどう感じたのか?という結果を知りやすい、というメリットがあります。自分の背後にカスタマーサポートが居て、機能のローンチ当日にその結果を実際の声に触れることができる環境もあるでしょう。その点は、制作会社ではなかなか味わいにくい仕事の醍醐味であると言えます。デメリットは、制作会社ほど表現に幅を求められることが少ないため、表現力が広がりにくいことではないでしょうか。また勤務時間についても比較的無理を強いられる場合が少ないため、デザイナーとしての限界値を求められる機会も少なくなります。積極性がなければデザインスキルが伸びにくい、と言えるのではないでしょうか。

まとめ+おまけ

今回こうした登壇の機会をいただいたことで、自分自身に今後求められることや目指すべき方向、日々のスキルアップ方法について、改めて深く考えることができました。登壇終了後は多くの方からご挨拶いただいたのですが、時間の関係でお話できなかった方もいらっしゃいました。そこで、期間限定で「制作会社のデザイナーに聞いてみたいこと」と題して、気軽に質問を書き込んでいただけるスプレッドシートをご用意しました。制作会社で働くデザイナーの話をもっと聞いてみたいという方は、ぜひこちらのシートに質問を書き込んでみていただければ、可能な範囲で回答させていただこうと思います。

制作会社のデザイナーに聞いてみたいこと

最後に、こうした機会にお声をかけていただいたrootの西村和則さんに深く感謝しています。会場にいらした方も含め、お礼を申し上げます。


1記事ではてブ数4901を獲得した私が伝えたいアウトプットに対する考え方

先日公開した「誰も教えてくれない「分かりやすく美しい図の作り方」超具体的な20のテクニック」という記事が、予想を遥かに超えて様々な方から多くの反響をいただきました。現時点での結果としてわかりやすい数字をご紹介すると、はてなブックマーク(通称はてブ)でブックマークされた数が約4900、Facebookでのシェア数が約11000、Newspicsでのシェア数が約6000となりました。

キャリア論、精神論、自分語りは、実力を兼ね備えた人の話しか影響力はありません。冷静に考えて、特に名があるわけでもない一介のWeb製作者の私が自分の経験談を語っても参考にならないため、極力このブログでも避けてきました。しかしこうした結果が生まれた今なら、自分自身のキャリアと行動を振り返って、自分なりのアウトプットに対する考え方をお話するのも良いかと考えました。

このエントリーで私が伝えたい結論は「他人に影響を与える質の高い自発的なアウトプットは自分自身のキャリアや生活に良い影響を与えるので、若いうちから積極的にアウトプットする習慣を身につけると良い」という話です。最初に言っておきますが、長いです。何卒ご了承の上で読み進めてください。以下、サマリーです。

  • 1. アウトプットの定義
  • 2. アウトプットに適した内容3種類
  • 3. 他人に影響を与えるアウトプットの2つの特長
  • 4. アウトプットの効果
  • 5. 自発的アウトプットと強制的アウトプットの違い
  • 6. アウトプットを阻む2種類の問題
  • 7. 私自身のアウトプット(4つの経験談)

1. アウトプットの定義

そもそもアウトプットとは何でしょうか。私の中では「自分以外の誰かが認識できる情報」と定義しています。私のようにブログに書く文章という形もあれば、絵、写真、映像、音楽、言葉など、人によって様々な形があります。

共通しているのは、頭の中の「思考」が目に見える形(もしくは耳に聞こえる形)となり、初めて「情報」となって、第三者に影響を与えるものだということです。ただ頭の中で考えているだけの「思考」は、他人に影響を与えることはありません。

アウトプットされた情報は物理的に存在するため、発信すると波が寄せ返すように、自分自身へのフィードバックとして影響が跳ね返ってきます。感謝、同意、反発といった感情もあれば、給料や報酬といったものもある意味フィードバックと言えます。

人は外部からのフィードバックを通して喜び、悲しみ、成長する生き物です。アウトプットによって多くのフィードバックを得る人ほど、感情が豊かになり、思考に深みが増します。人がアウトプットすることにはこうしたサイクルがあるということをまず覚えておきましょう。

2. アウトプットに適した内容3種類

私の中でのアウトプットの内容は、3種類に分類して考えています。「好きなこと」「できること」「学びたいこと」です。

(1)好きなこと

もっとも多くの人が始めやすいアウトプットは「好きなこと」です。私のようにブログに限らずとも、バンドを組んでライブをする、絵を描いて個展を開く、写真を撮ってギャラリーサイトを作る、小説を書いて賞レースに応募するなど、人によって様々な形があります。無条件に自分が好きなこと、表現したい欲求を解放すると、少なからず他人に影響を及ぼします。

(2)できること

自分がこれまで生きてきた中で培ったノウハウを公開することもアウトプットに向いています。身近なところで言えば、料理のレシピを他人に共有したり、育児日記を公開したりすることもありますし、講演を開いて多くの聴衆に語りかけるといった方法もあります。私が更新してきたデザインに関するブログもベースはここにあります。自分にとっては当たり前のことでも、他人にとっては非常に有益な情報になり得るのです。

(3)学びたいこと

知識が少ない分野の学びを深めるために、情報を蓄積することもアウトプットに適しています。脳科学的な話で言えば、頭の中にもやもやとある思考を言葉に置き換えて情報化すると、記憶は一時的な記憶装置である海馬から、記憶の金庫とも呼ばれる側頭葉に移動し、忘れにくい知識となって脳に定着するため、学びが加速します。(詳しくはこちら)またこうした学びのアウトプットには、類は友を呼ぶという言葉の通り、自然と共通の思考を持った人が集まり、知りたい情報が集まってくる特性があります。

3. 他人に影響を与えやすいアウトプット3種類

前述の通り、人によってアウトプットの形は様々ですが、他人に影響を与えやすい内容は共通しており「面白い」「共感できる」「役に立つ」に分類することができます。何かを発信するときは、この3つのうちのどれに該当するか?を考えましょう。

(1)面白い

見て、読んで、聞いて、「面白い」と感じさせるものは、他人に強い影響を及ぼします。人気のお笑い芸人の漫才、人気作家の最新の長編小説、読んで笑えるWeb上の記事などはこの面白さに該当します。また人気音楽アーティストの音楽など、五感で感情を揺さぶるアウトプットもここに分類されます。

(2)共感できる

情報の受け手が発信者の考えに強く同意できる内容は、この「共感できる」アウトプットに分類されます。音楽の歌詞に共感できる、エッセイの経験に共感できる、アート作者の感情に共感できるなど、大きな共感を生み出すものは強く人の心を惹きつけ、感情を揺さぶり、多くのフィードバックを生み出します。

(3)役に立つ

情報の受け手が発信された情報を活用することで、物事を効率化できたり、悩みを解決したりできる情報は「役に立つ」アウトプットに分類されます。私がこのブログでデザインに関するノウハウを発信していた記事も、この「役に立つ」に分類されます。前述の2つよりも、この「役に立つ」は意図的に実践しやすいアウトプットです。

4. 多くのフィードバックを得るために意識すべき3点

アウトプットの定義でお話したサイクル図を思い出してほしいのですが、より多くのフィードバックを得るために、意識しておくことが3つあります。これらを知っておくと、より多くのフィードバックを生むことができます。

(1)メッセージが絞られていること

一つのアウトプットの中に伝えたいことがいくつも含まれていたり、結局何が言いたいのかわからない場合、メッセージの受け手はそこから何を感じれば良いのか迷ってしまいます。例えば飲食店で考えてみると、「ラーメン+うどんセット」をお店の売りにしたい!と考えて発信しても、ラーメン好き・うどん好きのそれぞれの人からは「どちらも極めてない中途半端な店だなぁ」と感じられるでしょう。自分自身が伝えたいことを一言で言い切れるくらいにメッセージが絞られていればいるほど、良かれ悪かれ、他人に影響を与えやすくなります。

(2)受け手のメリットを優先していること

自分へのメリットを考慮するのは悪いことではありませんが、そちらを優先すると他人に影響を及ぼしにくくなります。人と会話していて「あ、なんかこの人の話は自慢臭いなぁ」「人より自分が優れてまっせアピールしたいんじゃないか」と感じたことはありませんか?自分自身のメリットがアウトプットに過剰に隠されていると、受け手は想像以上に敏感に察知します。基本的に受け手はマイナス目線で懐疑的に物事を見るため、自分自身へのメリットを優先したアウトプットは他人に影響を与えにくいのです。

(3)対象者の母数が多いこと

メッセージを絞り、受け手のメリットを優先してアウトプットしたとしても、受け取る人自体の人数が少ないと、影響の度合いは小さくなります。ニッチな分野で影響を及ぼすことも無意味ではありませんし、自分自身がどうしても発信したい情報に対して「対象者が少ないからやめておこう」と考えるのは、アウトプットを継続するためのモチベーションを著しく下げてしまうため、前者の2つほど過剰に意識することはありませんが、現実問題として踏まえておくことは重要です。

5. アウトプットが生み出す効果

好きなこと、できること、学びたいことからアウトプットを開始し、さらに他人に影響を与えやすい内容を考慮し始めると、自分の身の周りにも、自分自身にも、数多くの良い変化が生まれます。

周囲の変化

自分の考えに賛同・共感してくれる人が身の回りに現れます。もちろん場合によっては炎上するような大きな否定を生み出す可能性もありますが、それはある程度影響力を持った人のみに起こりやすいことです。逆に、前の章で述べたメッセージの絞り込みと、受け手のメリットの優先を守れば、自分を高く評価してくれる人が現れる可能性の方が高いのです。

自分の変化

本当に他人に伝わるものが何なのか?どうすればその内容が伝わるのか?本来達成すべき目標は何なのか?を突き詰める、深い思考力や洞察力が身につきます。ここで身につけた力は、日々取り組む仕事の中にも、プライベートにも十分に応用することができ、より物事を円滑に進めたり、より他人をスムーズに説得したりすることができるようになります。

6. 強制的アウトプットと自発的アウトプットの違い

さてここで一つご自身のアウトプット経験を思い出してください。何かの情報を発信することがアウトプットであるなら、学校で指示された課題も、会社で指示された仕事も全てアウトプットと呼べるのではないか?だとすれば毎日自分はアウトプットしているのではないか?と思いませんか?しかしながら、自発的に行なったアウトプットと他人に強制されたアウトプットには、大きな違いがあるのです。

強制的アウトプット

強制的アウトプットとは、自分以外の誰かに指示を受けて行うアウトプットです。指示された資料を集めること、指示された議事録を作成して共有すること、指示されたデザインを作ることなど、作業を完了させること自体が目的であると捉えがちなのです。本来はそのアウトプットの先にある気づきや学びが重要なのですが、そこに視点が及ばないケースが多いのです。

自発的アウトプット

自発的アウトプットとは、自分自身の意志によって行うアウトプットです。自分の撮った写真を見てもらいたい、作った音楽を聴いてほしい、書いた文章を読んでほしいなど、行動の先には他人からのフィードバックへの渇望があります。自発的にアウトプットすると、ほんの小さなフィードバックさえも敏感にキャッチできる、大きなアンテナが働くのです。

7. アウトプットを阻む2種類の問題

人によってはどうしても「自分にはできない」と語る人もいます。その原因は物理的な問題と、精神的な問題に分けることができるのですが、どのようにしてその問題に対処すれば良いのでしょうか。ここでは私なりの考え方・対処法を述べておきたいと思います。

(1)物理的問題 〜時間がない〜

もっとも多くの人が語る理由が「時間がない」という物理的な問題です。実際に年をとればとるほど、子育てや人付き合いなどで自分の時間を持つことは難しくなります。しかし実は、この「時間がない」という言葉は真意の上辺であって、本当のところは「そこまで何かしらアウトプットしなければまずい!」という危機的な状況に無いのです。現状の生活を変えたくない、変える必要がない、変えるための面倒さ・痛みを受けるくらいなら今のままで良い、という選択をしているのです。

本人の意思ありきでなければアウトプットは継続できないため、他人が「そんなことじゃダメだ!」と言って行動を変えようとすることには意味がなく、逆にストレスを与えてアウトプットを敬遠させることになります。

しかし長い人生の中では、会社の中でも私生活の中でも、周囲から変化を求められる時が必ずやってきます。その時に自分の変化するストレスから逃げ、目先の安息を優先したり、変化しない自分を「時間がない」といった言葉で肯定していては、自分の求める生活の豊かさ(地位や報酬の向上、円滑な人間関係など)を得ることはできません。

まず「時間が無い」と言ってしまう人は、自分自身をそうした上辺の言葉で肯定していることを冷静に受け止め、今自分が新たなアウトプットを開始すべきなのかどうか、しなければどんなデメリットがこの先起こり得るのかを、落ち着いて考えてみることをお勧めします。

(2)精神的問題 〜恥ずかしい・否定が怖い〜

精神的な問題でまず挙げられるのは、恥ずかしいという感情です。「薄い知識だなぁ」「考えが浅いなぁ」と見られるのは、誰しも恥ずかしいと感じるでしょう。実はこの問題は、匿名という方法で簡単に解決できます。ブログ業界で言えばちきりんさんなど、匿名でも大きな影響力を持つアウトプットを残す人は数多く存在します。まず匿名で始めてアウトプットが他人に影響を及ぼすようになってから、必要に応じて匿名をやめるという手もあります。ただ実名の方が現実の周囲と関係が近いため、強いフィードバックを得やすくなります。

そしてもう一つが、否定が怖いという感情です。残念ながらこの感情は、傷つくことから身を守るという、人が生まれ持って兼ね備えた自己防衛本能に紐付いた感情なので、消えることはありません。消えることはないものとして自分の中に受け入れ、折り合いをつけて心の中に同居させる必要があるのです。時に大きくなることも、小さくなることもあるこの否定への怖さを「消えるものではない」と受け入れた時、PPAPが世界で爆発的なヒットを飛ばすような、全く想像することのできない可能性につながることだってあるのです。

8. 私自身のアウトプット(4つの経験談)

以上が、私自身が経験の中で考えてきた、私なりのアウトプット論です。ここからは、そうしたアウトプット論にたどり着くまでに、私がどんな経験を経てきたのか、アウトプットからどんな恩恵を受けてきたのかをお話してみたいと思います。(Web業界に偏った話になります)

経験その1)初めての個人Webサイト

GOONEE.NETというドメインで、自己紹介、日々の日記、仕事の中で思うこと、写真、好きなサイトのリンク集などを掲載。FLASHでおもちゃのようなUI表現を追求。現在は運営終了。

もともと私がデザイナーとして働き始めた14年ほど前は、インターネットが劇的に世の中を変えていく流れがありました。私の感覚では、今の若いクリエイターよりも、当時のクリエイターの方がアウトプット欲が強く、こぞって自分のサイトを作ってセルフブランディングしていた記憶があります。

例にもれず、私自身も「人から羨望の眼差しで見られるサイトを持っていたい」と考るようになり、自らのドメインでサイトやブログを作って、ロモで撮った写真を掲載したり、自分の日々あった出来事などを発信したりするようになりました。自分の好きなことを自由に発表し、周囲からの反響を得る日々はとても楽しく、苦もなくアウトプットを継続できました。

最初に作った個人のWebサイトを経由して、当時海外に住んでいた見知らぬカメラマンからMixi経由で連絡をもらって個展のロゴやDMを作らせてもらったり、浅草に住む老舗和菓子店の若女将から個人的なサイト制作の依頼をいただくこともありました。どれも自らのアウトプット無しには成し得なかった経験でした。

経験その2)会社の昼休みを利用したランチブログサイト

そろそろひるめし@赤坂というサイト。赤坂でのランチを写真付きで紹介。のちにワンコインランチの店だけを集めた特集、自分なりのベストランチ特集といった企画ページを作成。現在は更新停止中。

7年ほど前には当時所属していた赤坂の会社で働く昼の時間を有効活用して、ランチブログサイトを運営してみました。会社の仕事だけではどうも張り合いがなく、どうせ誰が注目しているわけでもなし、気楽に好きなことをやってみようと、それまでやったことのないことを自由に試してみました。誤解を恐れず言うなら、暇つぶしです。

そのサイトでは、ランチの写真を撮るためにカメラを買ってみたり、自分の好きなロゴを作って面白がってみたり、さわったことのないWordpressをいじってカスタムしてみたり、ダウンロードできるワンコインランチマップを作ってみたりと、様々なことを試してみました。そうしているうちに、周囲から徐々に反応をもらえるようになりました。

最終的に転職を迎え、赤坂を去ると同時にそのサイトの運営はストップしましたが、自主的なWebサイトの運営経験は現在私が所属するWeb制作会社ベイジに転職する際の強力な武器になりましたし、冗談半分で作ったロゴは日本タイポグラフィ協会主催のタイポグラフィ年鑑への入選も果たしました。またサイト自体を有名なデザインポータルサイトロゴポータルサイトにも取り上げてもらえましたし、社内で話したことのない仕事のデキる先輩とも交流する機会を得ることができました。この頃には、アウトプットとは何か?を十分に理解していたつもりでした。

経験その3)下北沢を舞台にしたカフェブログサイト

東京昼カフェというサイト。東京都内のカフェを写真付きで紹介。下北沢が多めだが、東京都内を色々と掲載する展望を持っていた。現在は更新停止中。

以前のランチブログというアウトプットが自分に良い流れを生み出したことを踏まえ、現在所属するWeb制作会社ベイジに転職後は、職場が下北沢ということも踏まえ、カフェブログという形で新たなサイトをスタートさせました。関西出身で東京の地理に疎い私にとって、お洒落な街に繰り出して洒落たカフェを記録していくことはとても楽しい作業でした。

またこの頃から世間ではFacebookが台頭し始めました。一つひとつの投稿に対して「いいね!」という形でフィードバックが得られることは、何よりの楽しみでした。「いいね!」の数が増えれば増えるほど、自分自身の存在が認められていると感じ、毎回更新する度に楽しさは増していきました。結果的には都内のカフェを80件ほど取り上げました。

しかし、運営を開始してから2年ほど経ったある時、会社の面談の中で代表から「カフェブログやめたら?」という言葉を投げかけられました。カフェブログは写真や言葉がある程度のボリュームで掲載されているものの、そこに私自身の「思考や考察」が含まれていない、というのが指摘の理由でした。

指摘の通り、アウトプットを継続はしているものの、特に周囲にも自分自身にも何か際立って大きな影響を生み出してはいませんでした。ただ「アウトプットを継続している」ということだけが、自分自身を肯定する唯一の言い訳でした。

ここで思い出していただきたいのが前段で述べた「他人に影響を与えやすいアウトプット」の話です。私が指摘を受けた「思考や考察」とは、どのようにすれば第三者に強く影響を与えることができるのか?を深く考えること、だったのです。

私のカフェブログに全くそれが無かったとは言いませんが、それが深い考察であったか?と問われると、Yesとは言えませんでした。この時ばかりは流石に心が折れ、しばらく何かをアウトプットすることはありませんでした。

経験その4)デザイナーとしての考察ブログ

TomoyukiArasuna.comというブログ。デザインに関するノウハウ、書評、イベントレポートを中心に記事を掲載。現在も更新中。

アウトプットをやめた私の成長曲線は停滞しました。会社で与えられるプロジェクトを一生懸命こなしましたが、30歳を超えると徐々に、結果を出して当たり前、綺麗なデザインなんて出来て当たり前、専門知識があって当たり前、という状況になるのです。そうしたベースの能力に加えてさらに上のキャリアを目指すためには、他人への強い影響力が求められるのです。

この状況を打破するためには、周囲に影響を与えることができる、新たなアウトプットを始めるしか道はありませんでした。そこで始めたのがこのブログです。もともと私の会社の代表がブログで多くの人々に強い影響を与えていたため、不器用ながらも見よう見真似でまずは始めてみました。

もともと文章を書くことは苦手ではなく、やろうと決めたら文章自体をまとめることに楽しさは覚えましたが、開始当初の周囲の反応は薄いものでした。一生懸命考えて何日もかけて作った文章でも、びっくりするほど反応がありませんでした。

反応がない時には自分自身に「これは自らの言語化能力を鍛えるための活動だから、反応がなくても焦ることはない」と言い聞かせました。しかしその自分への言い訳こそが、私の能力にフタをしてしまっている原因だということに、投稿の回を重ねる毎に気がついていきました。

ある時、Googleからマテリアルデザインが発表された際、自分自身の勉強の意味も兼ねて概要をまとめたエントリーを投稿したところ、急にはてなブックマークが50を超える反応がありました。驚いてアクセスを見てみたところ、PV数は2000を超えていました。これは…と思い、カフェブログのアクセスを改めて見返してみると、MAX値でもPV数はたったの200ほどしかありませんでした。

ランチブログやカフェブログは一生懸命作っていました。しかし、より大きなフィードバックを受けるための「他人に影響を与えるにはどうすれば良いのか?」という視点が決定的に欠けていたことを、この時身をもって体感しました。

いくら美しい写真を掲載し、自分の好きな言葉を並べたとしても、見る人が少なければ自分に多くの良いフィードバックが返ってくることはありません。特に見た目へのこだわりの強いデザイナーという職業柄、この落とし穴には気がつきにくいものなのです。

それ以降のエントリーは、徹底的に読み手への影響を突き詰めて考え、精度を上げることに邁進しました。

最初にバズを生んだのは、Webデザイナーがワイヤーフレーム通りにデザインを作ってしまう問題を取り上げた記事です。この記事は、自分自身が過去に悩んだ問題を取り上げていて、当時の自分にアドバイスするならどう言えば伝わるのか?確実に失敗しなくなるためにはどう言えば良いか?を徹底的に考え抜きました。結果、はてブ数は400に到達しました。

その後、目立ってバズを生んだのはスマートフォンのUIに関する考察や、ランディングページのデザインノウハウをまとめたものでした。情報を記録したスプレッドシートも、数多く集めたサンプルも、記事を見る人のためになるという判断の元で惜しみなく公開しました。どちらも私自身が関わるWeb制作業務の話で、自分と同じWeb制作者には有益になるであろうと考えて発信した情報でした。

その後、今年に入って公開したのが先日の「誰も教えてくれない「分かりやすく美しい図の作り方」超具体的な20のテクニック」という記事でした。元々、同じ会社で働く若いデザイナーが図の作成に苦戦する姿を何度も見ていたため、自分自身のノウハウを共有するために作成したものでしたが、記事の読み手をデザイナーだけに限定すると、読み手の母数が少なくなってしまうことを、経験則で学んでいました。

また、以前に代表のブログのエントリーで提案書づくりのデザインに関する記事が人気を集めていたことを思い出し、デザイナーだけでなく、提案書づくりに関わる人をターゲットに含めれば、より多くの人々に響くのではないかと考えました。そしてどうすればそこで苦戦する人たちの問題が解決するか?を考え、解りやすい文章やサンプルを作成しました。

当初の想定では、はてブ300〜600くらい行けばいい方かな?と考えていましたが、結果は自分の想像をはるかに超える4901という数字で、アクセスは初日でおよそ10万PVありました。この結果は、私の的確な分析が全ての要因とは思っておらず、外部要因もあると考えています。しかし、徹底的に読み手の目線に立ってコンテンツを作るということが、他人への影響力と密接に関係しているということを改めて教えてくれました。

記事はまだ先週公開したばかりですが、自分の身の回りで様々な変化が起こり始めました。Facebookのフォロワーは約250人、Twitterのフォロワーは約300人ほど増え、これまで知り合うことの無かった方々からFacebook経由で多くの感謝のメッセージをいただきました。また登壇へのお誘いもいただくようになりました。

振り返ってみると、私のキャリアの中でジャンプするタイミングは、すべて自発的なアウトプットが関連していました。歳を重ねるごとに活動のスタイルは変わりますが、可能な限り今後も他人に有益な情報とは何か?を考えて、アウトプットを継続していきたいと考えています。

まとめ

冒頭で述べた通りの結論に戻ります。私がここにまとめた一連のアウトプットに対する考え方と、自らの経験から伝えたいメッセージは「他人に影響を与える質の高い自発的なアウトプットは自分自身のキャリアや生活に良い影響を与えるので、若いうちから積極的にアウトプットする習慣を身につけると良い」という話です。

「若いうちから」という言葉が入っているのには理由があります。それは、年齢を重ねれば重ねるほど身動きが取りづらくなることを身を持って経験していることや、大きな結果を残している人ほど、早くからアウトプットする習慣を身につけていることに、年齢を重ねてから気がついたからです。

また、アウトプットするかどうかは本人の自由です。誰に強制されるものでもありません。しかし、多くのアウトプットを重ねて思考を深めている人の方が、多くの企業、引いては世の中全体で必要とされる人材であり、自分の求める生活の豊かさ(地位や報酬の向上、円滑な人間関係など)を得られるという事実から目を背けてはいけません。その事実の前で、自分がどういった行動をとるか、できるだけ早く考えておくべきでしょう。

最後に、インターネットが普及している現在は昔と比べて、自発的なアウトプットで他人に影響を与えやすい環境が整っています。こうした時代に生きている中で自分の人生をより豊かにするために、その恩恵を賢く利用する道を選ぶのか、頑なに利用しない道を選ぶのかも、自分なりの考えを持っておくべきでしょう。私はWeb制作に関わる人間こそ、その恩恵を最もうまく利用して世の中に自分のアウトプットを数多く投げかけ、多くのフィードバックを受けて深い思考力や鋭い洞察力を身につけながら、力強く活躍していくべきだと考えています。

私のアウトプットに対する考え方と経験からの学びが、少しでも多くの方のお役に立てばと思います。