WebデザイナーがデザインするWebページの一つに、広告を経由して1ページ内で商材の特長を説明し、お問い合わせや購入へと導く「ランディングページ」があります。
ランディングページは、ユーザの興味を惹くビジュアルの魅力(シズル感)を特に強調したり、瞬時に内容を理解させるためのメリハリのコントロール力も特に求められるため、高いクオリティでページ全体をまとめ上げるには、幅広い表現力が求められます。
私もこれまで多くのランディングページのデザインに関わってきましたが、過去を振り返ると、制作に与えられる時間はタイトな割に、ページ内に掲載するボリュームは非常に多く、またメリハリを出すために様々な表現をいくつもの箇所で検討しなければならない、というケースが多々ありました。
デザイナーにとっては、いかにして効率的に、早く、且つ高品質でランディングページをデザインするのか?が大きな課題になるわけですが、多くのランディングページを分析してみると、特定の要素ごとにデザインの「セオリー」があることに気がつきます。
セオリーを意識せずにデザインを進めた場合、手当たり次第にデザインを考えるため、スムーズに進む時と進まない時の差が生まれますが、セオリーを知れば表現の幅が見えるため、無駄な方向に思考が拡散することが無くなり、効率的に作業を進めることができるのではないかと私は考えています。
ということで今回は、そんなランディングページで使われているデザインのセオリーを8つに分類し、そこにまつわる表現サンプルをまとめてみました。サンプル自体のクオリティよりも、表現の幅がこれだけある、という部分で参考になるかと思います。
- 01)文章
- 02)写真
- 03)人物
- 04)評価
- 05)現実メタファ
- 06)関係
- 07)背景
- 08)境界
01)文章
文章はランディングページ内で最も重要な要素です。ユーザは一行一説をじっくり読むことはなく、早いスピードで興味のある言葉のみを拾い読みしていくため、単語ごとにメリハリをつけたり、重要な言葉を特に目立たせたり、といった工夫が求められます。
1-1)マーカー
最低限ここだけは読んでほしいという文章に使うと効果的。ある程度長い文章でも使える。乱用しすぎず、一文の中なら1箇所を目安にすると良い。
1-2)強調点
見出し内で特に目を留めてほしい、短い単語に使うと効果的。長い文章に使うとワンポイントにならないので、あくまでも単語に使うのがポイント。
1-3)左右に斜線
見出しにちょっとした「勢い」を加える表現。大げさに入れる手もあるが、小さく入れるだけでも十分アクセントとして効くので、使い勝手が良い。
1-4)部分的な色変更
文章内で特に目を留めてほしい単語に使うと効果的な強調表現。色を変えた文字だけサイズを少し大きくすると、さらにその言葉の強調度合いが増す。
1-5)袋文字
言葉にボリューム感を持たせる表現。影やグラデーションを加えて密度を出すのも良い。多用しすぎると野暮ったくなるので注意が必要。
1-6)手書き文字
人っぽさ、人の温かさを出したい時に使える表現。ランディングページにおいては、お客様の声などで使われるケースが多い。
1-7)打ち消し線
元々の意味よりユーザに対するメリットが大きくなっている時に使える表現。金額が安くなっている場合などによく使われる。バツや二重線などバリエーションがある。
1-8)ギザギザ丸
サブ的な扱いとなる言葉をワンポイントとして入れる際に役立つ表現。大きく使うと大雑把感が出るため、小さくワンポイントにとどめておく方が良い。
02)写真
写真に関する表現は大きく3つ「角版」「丸版」「切り抜き版」に分類されます。少し変わった特徴的な表現が求められる場合には丸版や切り抜き版が、スタンダードで安定感が求められる場合には角版が使われます。
2-1)角版(四角でトリミング)
安定感のある表現。多くの商品写真を並列に整然と見せる際などに有効。画像の縦横の比率は3:4、2:3、1:1など実際の写真の比率と合わせると良い。
2-2)丸版(特殊な形でトリミング)
ポップさ、柔らかさ、かわいさ、親しみやすさ、といった印象を出す際に適した表現。丸をフリーハンド風の緩いラインにする手法もある。
2-3)切り抜き版
要素の形状をしっかり見せたい場合に使える表現。部分的に飛び出させることで、ワンポイントにするといったテクニックがある。
03)人物
ランディングページにおいて人物の表現は、お客様の声や、こんなお悩みありませんか?をはじめ、様々な箇所で多用されます。加えて、人が発した言葉をどういった表現で見せるかがポイントになります。
3-1)吹き出し
人が発した言葉、感じた言葉を伝える表現。丸、四角、モコモコした形など、形状も様々。タイトルに小さくアクセントとして使うのにも有効。
3-2)シルエット
人の写真が使えない時、匿名性を持たせたい時などに使える表現。ベクターデータのフリー素材がネット上に豊富にあるのでそれらを活用すると良い。
04)評価
その商材が賞を受賞している、ランキングで上位、品質が保証されているといった場合には、その事実を特に分かりやすく伝える必要があります。一目で伝えるためには、その内容を想起させる物理的なモチーフを使うことが定石になります。
4-1)メダル
金や銀のグラデーション、月桂樹を組み合わせた形、下からリボンが出た勲章風など、様々な表現がある。中に自由に言葉を入れて使う。
4-2)証書
紙にプリントされた賞状や保証書がモチーフになることが多い。こういったモチーフでよく併用される、飾り罫をうまく取り入れると良い。
05)現実メタファ
UIデザイン表現はフラットでシンプルな方向に流れていますが、ことランディングページにおいては一目見た時のインパクトが特に重視されるため、商材によってはまだまだ現実メタファを用いて緻密に作り込んだ表現が必要とされる場合があります。
5-1)紙
複数ある情報を一つにグループ化する際に最も多用される表現。ノート、メモ帳、付箋紙など様々なバリエーションがある。
5-2)紙+α
より強く紙らしさを演出する際に使う表現。クリップや押しピン、テープなどを組み合わせて使うことが多い。
5-3)プリント写真
クラフト感を演出する表現。文字が書き込めるポラロイド風もある。こちらは角版と同様に、実際の写真の比率(3:4や2:3)を守るのが鉄則。
5-4)手紙
お客様の声や企業からの心を込めたメッセージなど、人間味のある気持ちを伝える際に使える表現。ペンを添えるケースもよく見られる。
5-5)黒板
専門的な知識を伝える際授業のようなシーンや、カフェなどのメニューを模した印象を演出する表現。チョークの多色使いも併用される。
5-6)リボン
見出しやアクセントなど、様々な箇所で使える汎用性の高いモチーフ。横にまたいだり、角に掛けたり使い方に大きく幅がある。
5-7)クリップボード
チェック、現場感、調査といった意味合いで、枠組みとして使われる。紙の表現、マーカー文字の表現とも相性が良い。
06)関係
ランディングページには、最終的に商材の申し込みへと繋ぐにストーリーがあります。自然にそのストーリー伝えるためには、要素同士の関係性をどれだけ分かりやすく表現するかが重要になります。
6-1)接続
情報をつなぐ表現。「つまり」「だから」「こちら」などで使われることが多い。矢印は強力な視線の誘導になるため、使いこなすと内容がグッと伝わりやすくなる。
6-2)比較
ビフォーアフター、こんなに変わりました、といった際の表現。変化前を抑えめにし、変化後の方を強く強調してメリハリを持たせるのがポイント。
6-3)並列
複数の要素を同等に扱う表現。チェックボックスと言葉を組み合わせたり、ナンバリングを使って幾つの情報があるのか一目で分かるようにした表現が多い。
6-4)ステップ
お申し込みなどの手順を説明する表現。矢印や三角で左→右、上→下に流れを表現するのがベター。商材の性質にもよるが、ステップは3〜5にとどめると分かりやすい。
07)背景
ランディングページはあっという間に読み進められるため、狭い範囲に要素を詰め込むより、広い範囲に要素を大きく並べていく方が読みやすくなります。反面、広く合いたスペースを寂しく感じさせないよう、背景をどう処理するかを考える必要があります。
7-1)放射線
特定の要素に対して、登場感や凄みを出す際に使う表現。主にメインタイトルや商品写真の背景に使える。
7-2)写真
ワントーンで薄い色にした写真を敷いたり、レンズのボケをイメージさせて手前の商品を目立たせる表現などがある。
7-3)パターン
規則的に同じ形を並べる表現。毎回パターンを作るのは非常に手間がかかるため、ネット上にあるフリーのパターン素材をストックしておくと便利。
08)境界
ランディングページ内は幾つかの大きな情報の括りが存在しますが、ユーザに飽きさせずにページを読み進めてもらうためには、その区切り毎に強くメリハリをもたせる必要があります。情報同士の境界線部分をどのように表現するかがポイントになります。
8-1)見出し帯
帯と言葉で情報の括りを示す表現。ページ内で統一して一つの表現を使い回すのも良いが、同じパターンが続く退屈なデザインになっていないかに注意する必要がある。
8-2)見出し帯+角(つの)
見出し帯が上下、どちらを指し示すのかをより分かりやすくした表現。矢印があることで、より情報を読み進める作用も働く。
8-3)斜め
スポーティーさ、アクティブさ、エッジーさを表現する際に有効。境界線上に商品をかぶせるように置くと、より画面に動きが出る。
8-4)波
大きな波の形で柔らかな印象にしたり、小刻みで尖った形でポップな印象にしたりと、表現したい印象によって手法も様々。いろんなルールを併用しない方が良い。
まとめ
実際のところ、ランディングページは星の数ほどあるため、ここで取り上げたもの以上にまだまだ数多くの要素やセオリーがあるはずです。ランディングページ制作の依頼が来た時にそのセオリーやサンプルを調べ始めるよりも、いつも見ているデザインの参考をチョコチョコとストックして定期的に整理することが、効率的且つ高品質でデザインを仕上げるためのコツなのではないかと思います。みなさんもぜひ、自分なりのセオリーを見つけ出してみてはいかがでしょうか。