先日公開した「誰も教えてくれない「分かりやすく美しい図の作り方」超具体的な20のテクニック」という記事が、予想を遥かに超えて様々な方から多くの反響をいただきました。現時点での結果としてわかりやすい数字をご紹介すると、はてなブックマーク(通称はてブ)でブックマークされた数が約4900、Facebookでのシェア数が約11000、Newspicsでのシェア数が約6000となりました。
キャリア論、精神論、自分語りは、実力を兼ね備えた人の話しか影響力はありません。冷静に考えて、特に名があるわけでもない一介のWeb製作者の私が自分の経験談を語っても参考にならないため、極力このブログでも避けてきました。しかしこうした結果が生まれた今なら、自分自身のキャリアと行動を振り返って、自分なりのアウトプットに対する考え方をお話するのも良いかと考えました。
このエントリーで私が伝えたい結論は「他人に影響を与える質の高い自発的なアウトプットは自分自身のキャリアや生活に良い影響を与えるので、若いうちから積極的にアウトプットする習慣を身につけると良い」という話です。最初に言っておきますが、長いです。何卒ご了承の上で読み進めてください。以下、サマリーです。
- 1. アウトプットの定義
- 2. アウトプットに適した内容3種類
- 3. 他人に影響を与えるアウトプットの2つの特長
- 4. アウトプットの効果
- 5. 自発的アウトプットと強制的アウトプットの違い
- 6. アウトプットを阻む2種類の問題
- 7. 私自身のアウトプット(4つの経験談)
1. アウトプットの定義
そもそもアウトプットとは何でしょうか。私の中では「自分以外の誰かが認識できる情報」と定義しています。私のようにブログに書く文章という形もあれば、絵、写真、映像、音楽、言葉など、人によって様々な形があります。
共通しているのは、頭の中の「思考」が目に見える形(もしくは耳に聞こえる形)となり、初めて「情報」となって、第三者に影響を与えるものだということです。ただ頭の中で考えているだけの「思考」は、他人に影響を与えることはありません。
アウトプットされた情報は物理的に存在するため、発信すると波が寄せ返すように、自分自身へのフィードバックとして影響が跳ね返ってきます。感謝、同意、反発といった感情もあれば、給料や報酬といったものもある意味フィードバックと言えます。
人は外部からのフィードバックを通して喜び、悲しみ、成長する生き物です。アウトプットによって多くのフィードバックを得る人ほど、感情が豊かになり、思考に深みが増します。人がアウトプットすることにはこうしたサイクルがあるということをまず覚えておきましょう。
2. アウトプットに適した内容3種類
私の中でのアウトプットの内容は、3種類に分類して考えています。「好きなこと」「できること」「学びたいこと」です。
(1)好きなこと
もっとも多くの人が始めやすいアウトプットは「好きなこと」です。私のようにブログに限らずとも、バンドを組んでライブをする、絵を描いて個展を開く、写真を撮ってギャラリーサイトを作る、小説を書いて賞レースに応募するなど、人によって様々な形があります。無条件に自分が好きなこと、表現したい欲求を解放すると、少なからず他人に影響を及ぼします。
(2)できること
自分がこれまで生きてきた中で培ったノウハウを公開することもアウトプットに向いています。身近なところで言えば、料理のレシピを他人に共有したり、育児日記を公開したりすることもありますし、講演を開いて多くの聴衆に語りかけるといった方法もあります。私が更新してきたデザインに関するブログもベースはここにあります。自分にとっては当たり前のことでも、他人にとっては非常に有益な情報になり得るのです。
(3)学びたいこと
知識が少ない分野の学びを深めるために、情報を蓄積することもアウトプットに適しています。脳科学的な話で言えば、頭の中にもやもやとある思考を言葉に置き換えて情報化すると、記憶は一時的な記憶装置である海馬から、記憶の金庫とも呼ばれる側頭葉に移動し、忘れにくい知識となって脳に定着するため、学びが加速します。(詳しくはこちら)またこうした学びのアウトプットには、類は友を呼ぶという言葉の通り、自然と共通の思考を持った人が集まり、知りたい情報が集まってくる特性があります。
3. 他人に影響を与えやすいアウトプット3種類
前述の通り、人によってアウトプットの形は様々ですが、他人に影響を与えやすい内容は共通しており「面白い」「共感できる」「役に立つ」に分類することができます。何かを発信するときは、この3つのうちのどれに該当するか?を考えましょう。
(1)面白い
見て、読んで、聞いて、「面白い」と感じさせるものは、他人に強い影響を及ぼします。人気のお笑い芸人の漫才、人気作家の最新の長編小説、読んで笑えるWeb上の記事などはこの面白さに該当します。また人気音楽アーティストの音楽など、五感で感情を揺さぶるアウトプットもここに分類されます。
(2)共感できる
情報の受け手が発信者の考えに強く同意できる内容は、この「共感できる」アウトプットに分類されます。音楽の歌詞に共感できる、エッセイの経験に共感できる、アート作者の感情に共感できるなど、大きな共感を生み出すものは強く人の心を惹きつけ、感情を揺さぶり、多くのフィードバックを生み出します。
(3)役に立つ
情報の受け手が発信された情報を活用することで、物事を効率化できたり、悩みを解決したりできる情報は「役に立つ」アウトプットに分類されます。私がこのブログでデザインに関するノウハウを発信していた記事も、この「役に立つ」に分類されます。前述の2つよりも、この「役に立つ」は意図的に実践しやすいアウトプットです。
4. 多くのフィードバックを得るために意識すべき3点
アウトプットの定義でお話したサイクル図を思い出してほしいのですが、より多くのフィードバックを得るために、意識しておくことが3つあります。これらを知っておくと、より多くのフィードバックを生むことができます。
(1)メッセージが絞られていること
一つのアウトプットの中に伝えたいことがいくつも含まれていたり、結局何が言いたいのかわからない場合、メッセージの受け手はそこから何を感じれば良いのか迷ってしまいます。例えば飲食店で考えてみると、「ラーメン+うどんセット」をお店の売りにしたい!と考えて発信しても、ラーメン好き・うどん好きのそれぞれの人からは「どちらも極めてない中途半端な店だなぁ」と感じられるでしょう。自分自身が伝えたいことを一言で言い切れるくらいにメッセージが絞られていればいるほど、良かれ悪かれ、他人に影響を与えやすくなります。
(2)受け手のメリットを優先していること
自分へのメリットを考慮するのは悪いことではありませんが、そちらを優先すると他人に影響を及ぼしにくくなります。人と会話していて「あ、なんかこの人の話は自慢臭いなぁ」「人より自分が優れてまっせアピールしたいんじゃないか」と感じたことはありませんか?自分自身のメリットがアウトプットに過剰に隠されていると、受け手は想像以上に敏感に察知します。基本的に受け手はマイナス目線で懐疑的に物事を見るため、自分自身へのメリットを優先したアウトプットは他人に影響を与えにくいのです。
(3)対象者の母数が多いこと
メッセージを絞り、受け手のメリットを優先してアウトプットしたとしても、受け取る人自体の人数が少ないと、影響の度合いは小さくなります。ニッチな分野で影響を及ぼすことも無意味ではありませんし、自分自身がどうしても発信したい情報に対して「対象者が少ないからやめておこう」と考えるのは、アウトプットを継続するためのモチベーションを著しく下げてしまうため、前者の2つほど過剰に意識することはありませんが、現実問題として踏まえておくことは重要です。
5. アウトプットが生み出す効果
好きなこと、できること、学びたいことからアウトプットを開始し、さらに他人に影響を与えやすい内容を考慮し始めると、自分の身の周りにも、自分自身にも、数多くの良い変化が生まれます。
周囲の変化
自分の考えに賛同・共感してくれる人が身の回りに現れます。もちろん場合によっては炎上するような大きな否定を生み出す可能性もありますが、それはある程度影響力を持った人のみに起こりやすいことです。逆に、前の章で述べたメッセージの絞り込みと、受け手のメリットの優先を守れば、自分を高く評価してくれる人が現れる可能性の方が高いのです。
自分の変化
本当に他人に伝わるものが何なのか?どうすればその内容が伝わるのか?本来達成すべき目標は何なのか?を突き詰める、深い思考力や洞察力が身につきます。ここで身につけた力は、日々取り組む仕事の中にも、プライベートにも十分に応用することができ、より物事を円滑に進めたり、より他人をスムーズに説得したりすることができるようになります。
6. 強制的アウトプットと自発的アウトプットの違い
さてここで一つご自身のアウトプット経験を思い出してください。何かの情報を発信することがアウトプットであるなら、学校で指示された課題も、会社で指示された仕事も全てアウトプットと呼べるのではないか?だとすれば毎日自分はアウトプットしているのではないか?と思いませんか?しかしながら、自発的に行なったアウトプットと他人に強制されたアウトプットには、大きな違いがあるのです。
強制的アウトプット
強制的アウトプットとは、自分以外の誰かに指示を受けて行うアウトプットです。指示された資料を集めること、指示された議事録を作成して共有すること、指示されたデザインを作ることなど、作業を完了させること自体が目的であると捉えがちなのです。本来はそのアウトプットの先にある気づきや学びが重要なのですが、そこに視点が及ばないケースが多いのです。
自発的アウトプット
自発的アウトプットとは、自分自身の意志によって行うアウトプットです。自分の撮った写真を見てもらいたい、作った音楽を聴いてほしい、書いた文章を読んでほしいなど、行動の先には他人からのフィードバックへの渇望があります。自発的にアウトプットすると、ほんの小さなフィードバックさえも敏感にキャッチできる、大きなアンテナが働くのです。
7. アウトプットを阻む2種類の問題
人によってはどうしても「自分にはできない」と語る人もいます。その原因は物理的な問題と、精神的な問題に分けることができるのですが、どのようにしてその問題に対処すれば良いのでしょうか。ここでは私なりの考え方・対処法を述べておきたいと思います。
(1)物理的問題 〜時間がない〜
もっとも多くの人が語る理由が「時間がない」という物理的な問題です。実際に年をとればとるほど、子育てや人付き合いなどで自分の時間を持つことは難しくなります。しかし実は、この「時間がない」という言葉は真意の上辺であって、本当のところは「そこまで何かしらアウトプットしなければまずい!」という危機的な状況に無いのです。現状の生活を変えたくない、変える必要がない、変えるための面倒さ・痛みを受けるくらいなら今のままで良い、という選択をしているのです。
本人の意思ありきでなければアウトプットは継続できないため、他人が「そんなことじゃダメだ!」と言って行動を変えようとすることには意味がなく、逆にストレスを与えてアウトプットを敬遠させることになります。
しかし長い人生の中では、会社の中でも私生活の中でも、周囲から変化を求められる時が必ずやってきます。その時に自分の変化するストレスから逃げ、目先の安息を優先したり、変化しない自分を「時間がない」といった言葉で肯定していては、自分の求める生活の豊かさ(地位や報酬の向上、円滑な人間関係など)を得ることはできません。
まず「時間が無い」と言ってしまう人は、自分自身をそうした上辺の言葉で肯定していることを冷静に受け止め、今自分が新たなアウトプットを開始すべきなのかどうか、しなければどんなデメリットがこの先起こり得るのかを、落ち着いて考えてみることをお勧めします。
(2)精神的問題 〜恥ずかしい・否定が怖い〜
精神的な問題でまず挙げられるのは、恥ずかしいという感情です。「薄い知識だなぁ」「考えが浅いなぁ」と見られるのは、誰しも恥ずかしいと感じるでしょう。実はこの問題は、匿名という方法で簡単に解決できます。ブログ業界で言えばちきりんさんなど、匿名でも大きな影響力を持つアウトプットを残す人は数多く存在します。まず匿名で始めてアウトプットが他人に影響を及ぼすようになってから、必要に応じて匿名をやめるという手もあります。ただ実名の方が現実の周囲と関係が近いため、強いフィードバックを得やすくなります。
そしてもう一つが、否定が怖いという感情です。残念ながらこの感情は、傷つくことから身を守るという、人が生まれ持って兼ね備えた自己防衛本能に紐付いた感情なので、消えることはありません。消えることはないものとして自分の中に受け入れ、折り合いをつけて心の中に同居させる必要があるのです。時に大きくなることも、小さくなることもあるこの否定への怖さを「消えるものではない」と受け入れた時、PPAPが世界で爆発的なヒットを飛ばすような、全く想像することのできない可能性につながることだってあるのです。
8. 私自身のアウトプット(4つの経験談)
以上が、私自身が経験の中で考えてきた、私なりのアウトプット論です。ここからは、そうしたアウトプット論にたどり着くまでに、私がどんな経験を経てきたのか、アウトプットからどんな恩恵を受けてきたのかをお話してみたいと思います。(Web業界に偏った話になります)
経験その1)初めての個人Webサイト
GOONEE.NETというドメインで、自己紹介、日々の日記、仕事の中で思うこと、写真、好きなサイトのリンク集などを掲載。FLASHでおもちゃのようなUI表現を追求。現在は運営終了。
もともと私がデザイナーとして働き始めた14年ほど前は、インターネットが劇的に世の中を変えていく流れがありました。私の感覚では、今の若いクリエイターよりも、当時のクリエイターの方がアウトプット欲が強く、こぞって自分のサイトを作ってセルフブランディングしていた記憶があります。
例にもれず、私自身も「人から羨望の眼差しで見られるサイトを持っていたい」と考るようになり、自らのドメインでサイトやブログを作って、ロモで撮った写真を掲載したり、自分の日々あった出来事などを発信したりするようになりました。自分の好きなことを自由に発表し、周囲からの反響を得る日々はとても楽しく、苦もなくアウトプットを継続できました。
最初に作った個人のWebサイトを経由して、当時海外に住んでいた見知らぬカメラマンからMixi経由で連絡をもらって個展のロゴやDMを作らせてもらったり、浅草に住む老舗和菓子店の若女将から個人的なサイト制作の依頼をいただくこともありました。どれも自らのアウトプット無しには成し得なかった経験でした。
経験その2)会社の昼休みを利用したランチブログサイト
そろそろひるめし@赤坂というサイト。赤坂でのランチを写真付きで紹介。のちにワンコインランチの店だけを集めた特集、自分なりのベストランチ特集といった企画ページを作成。現在は更新停止中。
7年ほど前には当時所属していた赤坂の会社で働く昼の時間を有効活用して、ランチブログサイトを運営してみました。会社の仕事だけではどうも張り合いがなく、どうせ誰が注目しているわけでもなし、気楽に好きなことをやってみようと、それまでやったことのないことを自由に試してみました。誤解を恐れず言うなら、暇つぶしです。
そのサイトでは、ランチの写真を撮るためにカメラを買ってみたり、自分の好きなロゴを作って面白がってみたり、さわったことのないWordpressをいじってカスタムしてみたり、ダウンロードできるワンコインランチマップを作ってみたりと、様々なことを試してみました。そうしているうちに、周囲から徐々に反応をもらえるようになりました。
最終的に転職を迎え、赤坂を去ると同時にそのサイトの運営はストップしましたが、自主的なWebサイトの運営経験は現在私が所属するWeb制作会社ベイジに転職する際の強力な武器になりましたし、冗談半分で作ったロゴは日本タイポグラフィ協会主催のタイポグラフィ年鑑への入選も果たしました。またサイト自体を有名なデザインポータルサイトやロゴポータルサイトにも取り上げてもらえましたし、社内で話したことのない仕事のデキる先輩とも交流する機会を得ることができました。この頃には、アウトプットとは何か?を十分に理解していたつもりでした。
経験その3)下北沢を舞台にしたカフェブログサイト
東京昼カフェというサイト。東京都内のカフェを写真付きで紹介。下北沢が多めだが、東京都内を色々と掲載する展望を持っていた。現在は更新停止中。
以前のランチブログというアウトプットが自分に良い流れを生み出したことを踏まえ、現在所属するWeb制作会社ベイジに転職後は、職場が下北沢ということも踏まえ、カフェブログという形で新たなサイトをスタートさせました。関西出身で東京の地理に疎い私にとって、お洒落な街に繰り出して洒落たカフェを記録していくことはとても楽しい作業でした。
またこの頃から世間ではFacebookが台頭し始めました。一つひとつの投稿に対して「いいね!」という形でフィードバックが得られることは、何よりの楽しみでした。「いいね!」の数が増えれば増えるほど、自分自身の存在が認められていると感じ、毎回更新する度に楽しさは増していきました。結果的には都内のカフェを80件ほど取り上げました。
しかし、運営を開始してから2年ほど経ったある時、会社の面談の中で代表から「カフェブログやめたら?」という言葉を投げかけられました。カフェブログは写真や言葉がある程度のボリュームで掲載されているものの、そこに私自身の「思考や考察」が含まれていない、というのが指摘の理由でした。
指摘の通り、アウトプットを継続はしているものの、特に周囲にも自分自身にも何か際立って大きな影響を生み出してはいませんでした。ただ「アウトプットを継続している」ということだけが、自分自身を肯定する唯一の言い訳でした。
ここで思い出していただきたいのが前段で述べた「他人に影響を与えやすいアウトプット」の話です。私が指摘を受けた「思考や考察」とは、どのようにすれば第三者に強く影響を与えることができるのか?を深く考えること、だったのです。
私のカフェブログに全くそれが無かったとは言いませんが、それが深い考察であったか?と問われると、Yesとは言えませんでした。この時ばかりは流石に心が折れ、しばらく何かをアウトプットすることはありませんでした。
経験その4)デザイナーとしての考察ブログ
TomoyukiArasuna.comというブログ。デザインに関するノウハウ、書評、イベントレポートを中心に記事を掲載。現在も更新中。
アウトプットをやめた私の成長曲線は停滞しました。会社で与えられるプロジェクトを一生懸命こなしましたが、30歳を超えると徐々に、結果を出して当たり前、綺麗なデザインなんて出来て当たり前、専門知識があって当たり前、という状況になるのです。そうしたベースの能力に加えてさらに上のキャリアを目指すためには、他人への強い影響力が求められるのです。
この状況を打破するためには、周囲に影響を与えることができる、新たなアウトプットを始めるしか道はありませんでした。そこで始めたのがこのブログです。もともと私の会社の代表がブログで多くの人々に強い影響を与えていたため、不器用ながらも見よう見真似でまずは始めてみました。
もともと文章を書くことは苦手ではなく、やろうと決めたら文章自体をまとめることに楽しさは覚えましたが、開始当初の周囲の反応は薄いものでした。一生懸命考えて何日もかけて作った文章でも、びっくりするほど反応がありませんでした。
反応がない時には自分自身に「これは自らの言語化能力を鍛えるための活動だから、反応がなくても焦ることはない」と言い聞かせました。しかしその自分への言い訳こそが、私の能力にフタをしてしまっている原因だということに、投稿の回を重ねる毎に気がついていきました。
ある時、Googleからマテリアルデザインが発表された際、自分自身の勉強の意味も兼ねて概要をまとめたエントリーを投稿したところ、急にはてなブックマークが50を超える反応がありました。驚いてアクセスを見てみたところ、PV数は2000を超えていました。これは…と思い、カフェブログのアクセスを改めて見返してみると、MAX値でもPV数はたったの200ほどしかありませんでした。
ランチブログやカフェブログは一生懸命作っていました。しかし、より大きなフィードバックを受けるための「他人に影響を与えるにはどうすれば良いのか?」という視点が決定的に欠けていたことを、この時身をもって体感しました。
いくら美しい写真を掲載し、自分の好きな言葉を並べたとしても、見る人が少なければ自分に多くの良いフィードバックが返ってくることはありません。特に見た目へのこだわりの強いデザイナーという職業柄、この落とし穴には気がつきにくいものなのです。
それ以降のエントリーは、徹底的に読み手への影響を突き詰めて考え、精度を上げることに邁進しました。
最初にバズを生んだのは、Webデザイナーがワイヤーフレーム通りにデザインを作ってしまう問題を取り上げた記事です。この記事は、自分自身が過去に悩んだ問題を取り上げていて、当時の自分にアドバイスするならどう言えば伝わるのか?確実に失敗しなくなるためにはどう言えば良いか?を徹底的に考え抜きました。結果、はてブ数は400に到達しました。
その後、目立ってバズを生んだのはスマートフォンのUIに関する考察や、ランディングページのデザインノウハウをまとめたものでした。情報を記録したスプレッドシートも、数多く集めたサンプルも、記事を見る人のためになるという判断の元で惜しみなく公開しました。どちらも私自身が関わるWeb制作業務の話で、自分と同じWeb制作者には有益になるであろうと考えて発信した情報でした。
その後、今年に入って公開したのが先日の「誰も教えてくれない「分かりやすく美しい図の作り方」超具体的な20のテクニック」という記事でした。元々、同じ会社で働く若いデザイナーが図の作成に苦戦する姿を何度も見ていたため、自分自身のノウハウを共有するために作成したものでしたが、記事の読み手をデザイナーだけに限定すると、読み手の母数が少なくなってしまうことを、経験則で学んでいました。
また、以前に代表のブログのエントリーで提案書づくりのデザインに関する記事が人気を集めていたことを思い出し、デザイナーだけでなく、提案書づくりに関わる人をターゲットに含めれば、より多くの人々に響くのではないかと考えました。そしてどうすればそこで苦戦する人たちの問題が解決するか?を考え、解りやすい文章やサンプルを作成しました。
当初の想定では、はてブ300〜600くらい行けばいい方かな?と考えていましたが、結果は自分の想像をはるかに超える4901という数字で、アクセスは初日でおよそ10万PVありました。この結果は、私の的確な分析が全ての要因とは思っておらず、外部要因もあると考えています。しかし、徹底的に読み手の目線に立ってコンテンツを作るということが、他人への影響力と密接に関係しているということを改めて教えてくれました。
記事はまだ先週公開したばかりですが、自分の身の回りで様々な変化が起こり始めました。Facebookのフォロワーは約250人、Twitterのフォロワーは約300人ほど増え、これまで知り合うことの無かった方々からFacebook経由で多くの感謝のメッセージをいただきました。また登壇へのお誘いもいただくようになりました。
振り返ってみると、私のキャリアの中でジャンプするタイミングは、すべて自発的なアウトプットが関連していました。歳を重ねるごとに活動のスタイルは変わりますが、可能な限り今後も他人に有益な情報とは何か?を考えて、アウトプットを継続していきたいと考えています。
まとめ
冒頭で述べた通りの結論に戻ります。私がここにまとめた一連のアウトプットに対する考え方と、自らの経験から伝えたいメッセージは「他人に影響を与える質の高い自発的なアウトプットは自分自身のキャリアや生活に良い影響を与えるので、若いうちから積極的にアウトプットする習慣を身につけると良い」という話です。
「若いうちから」という言葉が入っているのには理由があります。それは、年齢を重ねれば重ねるほど身動きが取りづらくなることを身を持って経験していることや、大きな結果を残している人ほど、早くからアウトプットする習慣を身につけていることに、年齢を重ねてから気がついたからです。
また、アウトプットするかどうかは本人の自由です。誰に強制されるものでもありません。しかし、多くのアウトプットを重ねて思考を深めている人の方が、多くの企業、引いては世の中全体で必要とされる人材であり、自分の求める生活の豊かさ(地位や報酬の向上、円滑な人間関係など)を得られるという事実から目を背けてはいけません。その事実の前で、自分がどういった行動をとるか、できるだけ早く考えておくべきでしょう。
最後に、インターネットが普及している現在は昔と比べて、自発的なアウトプットで他人に影響を与えやすい環境が整っています。こうした時代に生きている中で自分の人生をより豊かにするために、その恩恵を賢く利用する道を選ぶのか、頑なに利用しない道を選ぶのかも、自分なりの考えを持っておくべきでしょう。私はWeb制作に関わる人間こそ、その恩恵を最もうまく利用して世の中に自分のアウトプットを数多く投げかけ、多くのフィードバックを受けて深い思考力や鋭い洞察力を身につけながら、力強く活躍していくべきだと考えています。
私のアウトプットに対する考え方と経験からの学びが、少しでも多くの方のお役に立てばと思います。