デザイン提出時にチェックすべき2つの要素

デザインが通らない理由は?

私は日々、主にウェブ制作において、デザイナー・アートディレクターとしてデザインを制作しています。作りだしたデザインは、社内で共にプロジェクトを進めるスタッフに説明し、その先でクライアントに説明し、最終的に全ての人から「このデザインでいきましょう」と了承をもらえて、晴れて世の中にお披露目となります。

しかし、提案しても「このデザインではダメ」「これでは承認できない」と言われることももちろんありますよね。そんな時は、悔しい想いを抑えつつもアイデア出しを重ね、納得してもらえるものを作りださなければなりません。

クライアント、共に仕事を進めるスタッフ、またその先のユーザ、皆が納得し、共感できるデザインとはどんなデザインなのでしょうか。またそのデザインを作る上で、デザイナーが身につけなければならない力には、何があるのでしょうか。少々ざっくりとしたテーマですが、じっくり考えてみたいと思います。

デザインの良し悪しを左右する2つの力

私のデザイナーとしてのキャリアは約10年なのですが、その中で様々な優秀なデザイナーの方の考え方に触れる機会がありました。中でも私が最も共感できた考え方は、良いデザインは「造形としての美しさ」と「考え抜かれたコンセプト」の2つの力で構成されているという考え方です。

「造形としての美しさ」とは、ひと目見た瞬間、理由よりも先に、とにかく惹きつけられる、魅力を感じる、心がドキドキするといった、見る人の感覚に無条件に訴えかける力です。

そしてもう一つの力、「考え抜かれたコンセプト」とは、その色・形にした理由、その造形に至った経緯を説明した言葉・文章です。

この2つの力が高いレベルで備わった時、お客さまや社内で共にプロジェクトを進めるスタッフ、またその先の商品を使う消費者、ウェブサイトを見る人の心に響くと考えられます。

2つの力のバランス

前述した2つの力のバランスをが悪いと、どういったことになるのでしょうか。一つずつ考えてみましょう。

まずは造形として美しいけれど、コンセプトが弱いというケース。稀にお客さまの中には、ひと目見てフィーリングで「気に入った!これで行こう!」という方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの方にデザインを提案していく上では、論理的な根拠が無ければ説得力がありません。

もう一つは論理立てたコンセプトはあるものの、見た目がいまひとつ…というケース。この場合は言わずもがな、直観的にNGとされる場合が多いです。クライアントには論理立てた説明をして、承認を得て運よく世の中に出回ったとしても、最終的にそのデザインに触れるユーザが見た場合に、理解できないことになります。

こういったケースに陥らないためにも、「造形としての美しさ」と「考え抜かれたコンセプト」、この2つの要素を最適なバランスで満たすことが、良いデザインであると言えます。

実例で検証してみよう

前述した2つの要素を、ここではロゴのデザイン(CI・VI)で検証してみましょう。ご紹介する事例のコンセプトは、それぞれ作られたデザイナーさんのサイトや本から引用させていただきました。「造形としての美しさ」という点では個人的な好みの部分ももちろんありますが、私が良いと思う3つの実例を通して、考えをさらに深めることができればと思います。

例1)イナダ組

AD/D:上田亮(COMMUNE

イナダ組という劇団のシンボルマークです。コンセプトは、劇団の根本にある「演じる」ということ、普段の自分を捨て、もう一つの自分に成り切ることを、シンボルマークでも表現したい、という考えが核になっています。このシンボルのアイデアは、アルファベットが日本語のカタカナや漢字に「成り切って演じている」というもの。欧文書体のパーツを組み合わせ、日本語の形を作り、「演じる」というコンセプトを見事にシンボルの中に凝縮したところに素晴らしさがあります。造形としても非常にユニークで、魅力的です。

例2)NHK BSプレミアム

AD/D:甲谷一(Happy and Happy

こちらはNHKのBSプレミアムのロゴです。BSプレミアムは「紀行・自然・美術・歴史・宇宙・音楽・シアター」の7つのテーマにこだわった、本物志向の娯楽チャンネル。3本のラインはそれぞれ「高品質」「多彩さ」「こだわり(厳選)」を意味していて、3本のラインが未来へと向かっていく姿を、「P」の文字をモチーフに表現されています。また、ゴールドの配色には「永遠」「輝き」を表しています。このシンボルマークを見た時、まずその造形の美しさに惹かれました。そしてその形である理由、コンセプトを知り、さらにこのマークの魅力が大きくなりました。

例3)そろそろひるめし

AD/D:荒砂智之(baigie

最後の一つ、こちらは私が2年ほど前に運営していた、東京都港区赤坂でのランチの記録を綴ったサイト、そろそろひるめし@赤坂のシンボルマークです。ターゲットは赤坂で働くビジネスマン。日々仕事に追われる忙しい毎日の中、ランチタイムくらいは共に働く仲間と美味しいご飯を囲み、和やかな時間を過ごしてもらいたい。サイトから感じてもらいたい楽しさ、和やかさ、安心感を、ランチを示す「昼」という漢字と、どこか人を安心させる表情の「顔」を組み合わせて表現しました。

3つの実例はいかがだったでしょうか。特に最初の2つの実例は、造形としての美しさと考え抜かれたコンセプト」が、とても高いレベルで共存していると思います。3つ目の例は手前味噌ですが、最初の2つの実例のクオリティに少しでも近づきたいと考えて作ったもので、サイトを見ていただいたいろんな方々から良い反響をいただきました。その時、この記事で述べている2つの力の考え方に確信を持ったのです。

2つの力を身につけるためにデザイナーがすべきこと

まとめとして、前述した2つの力を高いレベルで身に付けるために、具体的にデザイナーがやるべきことを考えてみたいと思います。

造形としての美しいものを作る力を身につけるためにすべきことは「表現力の探究」です。自分がそれまで培ってきた技術におぼれることなく、常に優れたデザインを沢山見て、見るだけでなく何が凄いのか、何が魅力的なのかを分析し、アウトプットする習慣を付けることが重要です。特に若手と呼ばれる時期を過ぎて幾つかの成功体験を得た人は、自分の経験則のみで物事を判断してしまいがち。自分の力を過信することなく、貪欲にいろんなものを吸収する姿勢が重要です。

そして、考え抜かれたコンセプトを提案するために習得すべきことは「自分の考えを言葉・文章に置き換える力」です。デザインを作った時、なんとなく感じるままに、なんとなくPC上で形作ることもあるでしょう。しかし、伝えたい相手にコンセプトを説明する上では、きちんと自分の考えを言葉・文章にまとめなくてはなりません。この力を鍛えるためには、お客様や社内のスタッフにデザインを共有する時に、必ず自分の言葉で説明を付け加えて共有する癖を付け、トライ&エラーを繰り返すと良いと思います。

デザインの提出時には、この2つの要素がバランスよく備わっているかチェックしてみることをオススメします。


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